第13話 日常
「えーと……日本神話において、
ある日のお昼休み、私は窓側の自分の席で携帯電話を活用しながら日本神話の神様について調査をしていた。元から神話や妖怪については興味があったのでそこそこ知識はあったけれど、神野和として活動し始めてからはもっと調べるようになっていた。
と言うのも、神野和として配信をする際、たまに視聴者の人から日本神話の神様についての質問をされる事があり、前に何度か知識不足で答えられなくなりそうになったという実例があった。
だから、私はそれを避けるために日本神話や歴史、そして妖怪や民話などについても時間を作って調べては纏めるといった事をし始めたのだった。
その甲斐もあってかそういう質問が飛んできても迷わずに答えられるようにもなり、普段も歴史や古文の授業に関してはクラスでもトップクラスの成績を取れるようになるなど良い事ばかりになっていた。
「……ゴドフリー君のためでもあるしね。私が出来る事なんてこのくらいしかないし、もっと知識面でサポートしないと……」
ペンを握る手が強くなり、それに比例して筆圧も少し強くなってきたその時だった。
「いーさみ!」
「ひゃうっ!?」
突然肩を強く叩かれ、思わず変な声を出してしまった。そして何事かと思いながら声がした方を見ると、そこには私の数少ない友達の一人が立っていた。
「もう……
「あはは、ごめんごめん」
本当にごめんと思っているのかと疑うくらいの明るさで秋緋はニッコリと笑う。この子、
普段から騒がしいくらいに明るく、クラスメート達からの評判も決して悪くないが、思った事を結構ズバズバというタイプな上に飽きっぽいところもあるので、新しい物に手を出してはすぐに飽きてまた別の物に手を出すという場面を私はよく見てきた。
そしてそんな秋緋の姿を見ながらため息をついていると、秋緋は私の机の上の物に目を向けて呆れたように首を横に振った。
「勇美ってばまたそんなの調べてるの? 神話とかなんかオタク臭くない?」
「そんなことないよ。たしかにアニメやゲームでも題材として取り上げられる事は多いみたいだけど、その国の歴史を知る上で役立つ物ではあるし、私はやっぱり好きかな」
「ふーん……私にはやっぱりわからない世界だなぁ。神話もそうだけど、歴史ってなんだか古臭く感じるし、いつまでもそういうのにすがってばかりに見えてなんかカッコ悪いっていうか」
「あはは……歴史学者の人達に聞かれたら本気で怒られそうな事を言うね。そういえば、彼氏さんに呼ばれてたはずだけど、用事はもう良いの?」
「うん。というか、もう別れた」
「え、もう!? 一月前に付き合い始めたばかりでしょ?」
驚く中で秋緋は大きくため息をついた。
「だって、いつまでも手を繋ごうともしないし、いざデートに行くってなってもなんだかダサい所にしかいかないんだもん。顔もそんなにタイプじゃなかったし、流石に飽きちゃった」
「飽きちゃったって……まあ秋緋が良いなら私は良いんだけど、そう考えると私はよく飽きられないなと思うよ」
「うーん……だって、勇美はなんか見てて飽きないんだもん。どうして飽きないのかって言われてもしっかりとした理由は出てこないけど、不思議と飽きないなって思うのが理由なのかも」
「そっか……」
その言葉を何となく嬉しく思っていた時、私はふと視線を感じた。その視線の先を見ると、そこには私の反対側にある端の席に座っている女の子がおり、私の視線に気づいた瞬間にその子は慌てた様子で視線をそらしてしまった。
「
「さあね。私、あの子苦手だしよくわかんないかな。いっつも携帯見てニヤニヤしてるし、前髪長くて目も隠れてるからなんだか気持ち悪い」
「いわゆるメカクレって奴だね。好きな人からすれば本当に好きらしいよ、メカクレって」
「え、そうなの? うわ、そういうの私はお断りだわ」
秋緋が嫌そうに言う中、私は大和さんに視線を向けた。大和
何故なら、大和さん自身があまり話したがる方ではない上に話しかけようとしてもすぐに離れてしまうので話しかける事すら出来ないからだ。
クラスの男子達もイジメこそしないまでも大和さんの事はあまり好きではないようで、付き合いたくないクラスの女子の一人として勝手に決めてるようだ。
因みに、秋緋はその反対の付き合いたいクラスの女子の一人で、その他にはギャルグループのリーダーである
「……まあ、何か用事があったら向こうから声をかけてくるよね」
「だね。てか、勇美こそ彼氏作りなよ。そういうの興味ないの?」
「ないわけじゃないけど、私には縁がない話だって思ってるかな。私だって男子が付き合いたくない女子の一人に入れられてそうだし」
「そう? 勇美が良いなら良いけど、今時は小学生、もしかしたら幼稚園児だって彼氏の一人や二人作ってそうな時代だし、それ以下ってなったら笑えないよ?」
「あはは……ま、まあね……」
秋緋は相変わらずだと思いながら私は返事をする。恋愛に興味がないわけじゃないのは本音だ。
でも、今はVTuberとしての活動が楽しいし、ゴドフリー君のサポートだってあるのだ。基本的に配信者に恋人の影があるのは良くないと聞くし、そういう相手が出来たらサポートだってうまく出来なくなる可能性がある。だから、別に構わないのだ。今はこれで満足しているのだから。
そう考えた後、私は一回調べ物を止め、お昼休みが終わるまで秋緋との会話を楽しんだ。
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