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「おお~明人君が認めてくれたならよかったよ。お手柄だね。沙紀ちゃん」

「いえ、当然のことをしたまでです」


僕は彩華さんに有志のことをちゃんと伝えておいた。恐怖もあるがそれ以上にやりたいという欲求が強かった。


「今週の後半から繁忙期が終わるから、そこで一回合わせてみようか」

「「はい」」

「後、曲はこの3曲になるから、覚えておいて」


僕は生徒会のLINEグループに送られてきた曲を見る。


(あれ、これって沙紀が歌ってた曲じゃん)


昨日一回しか聞いていないが、本家はこんな感じなのか。


「沙紀の方がうまくない?(ボソ」


思わず声がこぼれる。


「な、なによ!褒めても仕事しか出てこないわよ///」

「罰ゲームじゃん」


沙紀の照れ隠しにツッコミをいれる。


「はいはい。ご馳走様でした。早く仕事をしないと量を増やすよぉ?」


彩華さんが笑顔で眉間に怒りマークを浮かべ得ていた。僕はさっさと仕事に戻ろうとしたのだが、


「ふふ、独り身乙(笑)」


彩華さんにストレスが溜まっていたのだろう。後ろを向きながら沙紀は禁忌の煽りを行った。ギギギと後ろを見ると、彩華さんが笑っていた。けれど、いつもの癒される笑顔ではなく、物凄く深かった。


「沙紀、それは私たちにも喧嘩売ってる。OK?」

「うんうん。売られた喧嘩は倍値で買うよ~?」

「そっちがその気なら、こっちもそれ相応の対応をさせてもらうわ」


彩華さん以外の役員の皆様も切れていた。けれど、沙紀は調子に乗っていた。


「本当のことを言っただけですよ~」


完全に生徒会全員を敵に回した。ブチっとキレる音が聞こえてきた。


「凜ちゃん」

「合点承知の助」

「え?」


沙紀は凜さんに後ろ手を縛られていた。


(早すぎ)


「協力しよう」

「ん、了解」

「まっかせて~」

沙紀を凜さんが抑えつけた後、彩華さんと由紀さんと花蓮さんがこっちに向かってきた。


「え?え?」


僕はせまりくる先輩方からじりじりと後ろに逃げる、が、背後にある客用の椅子に気が付かなかった。


「うわ!」


そのまま僕は椅子に座り込んでしまった。すると、由紀さんが僕の膝の上に乗ってきて、左側に彩華さん、右側に花蓮さんが座ってきた。


しかも密着率が滅茶苦茶高い。


「な、な、何しているんですかぁ!!」


沙紀が叫んで僕の下に行こうとするが、凜さんが完全に抑えつけている。


「沙紀が悪いんだから、大人しくしていなさい」

「ぐっ」


沙紀は悔しそうにしている。


「あの、この状況はいったい・・・?」

「ん?沙紀ちゃんへの復讐だよ」

「はあ」

「疑似NTRしてサキサキにざまぁをしてあげてるの」

「花蓮さんが何を言っているのか分からないです・・・」


(なんだよNTRって)


知らない言葉がポンポン出てきてどうすればいいのか分からなかった。


「要するに沙紀の大好きな明人を寝取った。OK?」

「なんとなくは」


沙紀の様子を見るに、効果は抜群だったようだ。


「ほらほら明人君~今日買ったプリンがあるんだ~食べさせてあげる♡」

「いやお腹減って「えい!」ぐっ」

「あああああ」


彩華さんにあ~んをされてしまった。半ば強引に。沙紀は発狂する。


「どう?おいしい?」

「・・・はい///」

「愛情がこもってるからね♡」


(まさか沙紀以外の人間にそんなことをされるとは・・・)


「次は私だね!」

「ごめんなさい!私が悪かったです!」

「ダメよ沙紀。独り身へのマウントはどれだけ罪が重いかを思い知りなさい」


沙紀が謝罪をしてきたが、凜さんは離す気がないらしい。


「ねぇ、アッキー私のことどう思う?」

「え?いい人だなぁと」

「そうじゃなくて」


僕の腕をその豊満な胸の中に押し込んで、上目遣いで聞いてきた。


「女としてどうなのかなぁって」

「そ、それは///」

「サキサキよりも私の方がイイコトをたくさん教えてあげられるよ♡」

「っ///」


凄い迫り方だった。女性関係がほぼ皆無な僕には恐ろしく感じられた。


「な~んてねぇ。私のターンはおしまい。これ以上やると、サキサキが壊れちゃうからね~」


ベロを出していたずらを許してねという顔を僕に向ける花蓮さん


「う~、こんなところでNTR現場を見てしまうなんて・・・」


沙紀が項垂れていた。


(もう勘弁してあげて欲しい)


「ん、じゃあ最後は私」


さっきから僕の膝の上に座っていた由紀さんがこっちを見てきた。そして、


「ん、おっきくなってる。明人ったら私に興奮していたんだね♡」

「アウト!!!」


なんというか小柄な由紀さんが言うと犯罪臭しかしない。僕は無理やり彼女たちをどかした。


「うう、ついに濡れ場まで・・・」

「この辺でいいわね」


凜さんはついに沙紀の拘束を解除した。そして、彩華さんが机に突っ伏している沙紀の肩を優しくポンポンと叩く。


「沙紀ちゃん、独身貴族の私たちにああいうことをやるとどうなるか分かった?」

「はい、ごめんなさい・・・NTRの一部始終を見せられて、反省しました・・・」

「一部始終?」

「ん。分かりやすく言うと、彩華が彼氏持ちにアタック。花蓮が軽い女アピールで男の警戒心を解く。そして、最後に私がゴール。沙紀にはNTRのストーリーを生々しく教えてあげただけ」


(えっぐ)


「もうあんなことをやりません。私が間違っていました」

「うんうん。もう二度とやったらダメだからね?」

「はい・・・」


こういっちゃ悪いけど、沙紀にはいい薬になったと思う。松山への追い詰め方しかり、一回、こういう返り討ちを食らっておくのも悪いことではないだろう。


「あれ、明人。ほっぺに何かついているわよ?」


凜さんが言ってきたが、どこについているか分からない」


「ちょっとじっとしていて、取ってあげる」


ハンカチを取り出して僕の頬を拭う。


「あ、ありがとうございます」

「いいのよ、気にしない・・・ってあんたたちどうしたのよ?」


すると、由紀さんが


「なるほど、これが本当のオチ」

「え?」

「リンリンもえげつないね~」

「ちょっどういうこと?」

「凜ちゃん、その発想はなかったよ」

「ええ・・・?」


凜さんの行いに沙紀はわなわなと震えていた。


「彼氏が別の女との結婚生活を楽しんでいるのを見てしまった私の気持ち・・・」

「は、はあ?」


凜さんの所業に沙紀は完全にノックダウンしてしまった。沙紀はその日屍のようにボーっとしながら、仕事をこなすのであった。

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