第3話

世の中がざわめきだす午前10時のリミットまでは

自分だけの空間で夢見心地で過ごしたい

そんなあたしの楽しい気持ち以外

全部なければいいんだ

全部全部きえてしまえ


そんなことを考えながら

ちょっとトイレに行きたいことに気づいてしまった残念な時は

まるで忍者みたいに

家族が起きないようにそろそろと息を殺してゆっくり歩く

嬉しくない特技だけれど

『気配を消す』

それ得意

満喫してる時間ほど存在感溢れでちゃうから

あたしの存在感って常に希薄


そろりそろりと家族を起こさずに

部屋に戻って

2分前と何も変わらない自分の空間に

再度酔いしれる

何の変化のないこの平穏に優しさ感じちゃう


せっかく部屋に戻ったけど

ちょっとテンション上がっちゃったし

お腹も空いたなって思って

再度部屋を抜け出して

キッチンまで

この静かな緊張感に

そんなことに心をドキドキさせながら

まるでゲームのミッションのように

こんなことがあたしのちっぽけな冒険


大好きな果汁100パーセントのオレンジジュースと

お砂糖まぶした

めちゃくちゃ甘ったるいデニッシュパンを手に取って

また幸せの空間に旅立つ

こんな時のあたしは

誰も見たことがないような

大好物を手に入れた野良猫みたいなウザイ顔してるんだろうな

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