家で二人きり...危険な予感

 放課後、俺はひとり教室を飛び出た。

 楓は、事務所の関係者に連れ戻されて帰った。やはり、自由はないらしい。


 なんとかしてやりたいが、俺にそんな権限はない。


 なにか良い方法があればいいのだが……。

 そんなことを考えながら廊下を歩いていると――。



「オラアアアアアアアア、東山ァアアアアア!!」



 顔を真っ赤にした金剛先輩が俺の方へ突っ走ってきた。またか。



「なんです、先輩」

「さっきはよくもやりやがったなァ!!」

「あれは俺ではないですよ。名も知らない女子がやったんです」


「嘘つけ! 親し気に話していたじゃねぇか! しかも安楽島に似ていたぞ! どういうことだ!」


 そんな興奮しなくても。

 けど、これは相当お怒りだな。

 下手に言えば殺されるかもしれん。


「ほら、よく言うじゃないですか。この世には自分に似た者が五人はいるって」

「そんな多くねぇだろ! 確か三人くらいだ」

「そう、それです」

「なんだ、ドッペルゲンガーとでも言いたいのか」

「かもしれませんね」

「ふざけんな」


 殴られそうになったので俺は回避した。

 こういう輩に絡まれると思うと、少しは鍛えておいた方がいいのかもしれない。

 とにかく、これ以上はダルい。


「あ、大和田先生!」


 俺は架空の先生の名を叫んだ。

 すると金剛先輩は慌てはじめた。


「チッ! こんな時に先公か! 東山、覚えておけよ!!」


 焦って逃げ出す先輩さん。

 案外、アホなんだな。


 面倒事を脱した俺は学校を出た。


 校門を出た途端、誰かから手を握られて俺はビックリした。



「ひゃ!?」

「――あは。ごめんね、湊」



 そこには笑顔の風花が。

 そ、そうか……今俺の手を握ったのは風花か。


 って、握られてる……。

 細いな、指。



「風花、驚かすなよ」

「ごめんごめん。ていうか、一緒に帰ろうよ」

「べ、別に構わんが」

「うんうん。じゃあ、行こっか」



 歩いて自宅を目指した。

 家に着くと、風花もなぜか俺の家の前で立ち尽くした。



「えっと……」

「ん?」

「どうした? 帰らないの?」

「いや~、湊の家にお邪魔しようかなって」

「なにィ!?」


「お邪魔しまーす!」



 元気よく俺の家に突入していく風花。マジかよ!!


 これはつまり、女子と二人きりで……それはマズい気がするけど、でもまてよ。楓を救い出すチャンスかもしれない。

 風花に頼んで楓を解放できないか交渉してみる価値はあるだろう。


 ならば……!


 家の中へ入り、そのままリビングへ。


「風花、ソファに座ってくれ」

「う、うん……。その、変なことしたら叫ぶからね! していいけど!」


「!?」


 いや、どっちだよ!?

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