なにかがない少女たちの異世界物語

ぶんんn

第1話 始まり

私達7人は戦争孤児だ。

みんな家族はおらず、身体のどこかが無かった。

そんな私達を育ててくれたのは1人の神父だ。


「おーい、起きろー」

この声で毎日が始まる。

「おい、目無し、みんなも起こしといてくれ」

目無し、これが私の名だ。

私達7人は名前が無かった。だから神父がつけてくれた。でもみんなは納得していないらしく、お互いに、目無しは、メナ

     右手無しは、ミテナ

     左手無しは、ヒテナ

     口無しは、クナ

     耳無しは、ミナ

     右足無しは、ミアナ

     左足無しは、ヒアナ

という感じで読んでいる。

今思ったら、適当に付けすぎたと思っている。

あと私は左目がないのであって右目はちゃんとあるから安心して欲しい。

「もう飯は作っといたからな」

パンのいい匂いがしてくる。

今日は神父は買い物に行くから私達は留守番だ。

「メナ、おはよう」

「おはよう、ヒアナ」

「メナ、一緒に行こ」

「うん」

ヒアナはおとなしくていい子だ。


「ヒアナ、なに読んでるの?」

「昨日の新聞だよ」

「なんかあった?」

「うーん、なんか土地が紫色になる現象が起きてるんだって」

「へー」

上からすごい勢いで降りてくる音がする。

「おーい、なに2人で食ってるんだよ」

「そうですよ」

みんな起きてきたようだ。

「あれ、神父はいないの?」

「そうだよ」

「やったー、外で遊べるー!」

今日は遊び放題だな。


「もう寝るの?」

ミアナは不満そうだ。

「神父、帰ってこなかったね」

ヒアナが心配そうに言う。

確かに帰ってこないのは初めてだ。

「明日には帰ってくるでしょ」

左目が痛い。


その夜、誰かの悲鳴で目が覚めた。

「なんだ!」

ヒアナはもう起きてるようだ。

「なにが起こったの?」

ヒアナは困惑しているようだ。

「ミアナ、起きろ!」

恐らくあの悲鳴は下の4人のだ。

「早く下に行くぞ!」

私は2人に呼びかける。

でもその時窓を見てしまった。

「嘘だろ」

孤児院の周りの土が紫色になっているのを。

脳裏に朝の新聞のことがよぎる。








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