天性のせつなさ

明鏡止水

第1話

 一人暮らしだった。

ただ、住み始めたのは一ヶ月前。レトルトや缶詰を二万円くらいかけて買って籠城でもするかのように住む部屋に運び込んだ。

 父親にはまな板も包丁も買わないとは何事か!意味が無い!と否定された。

 どれくらい住むか分からないのに、あんまり一気に物を増やしたく無い。最初は力まず出来合いでいいじゃないか。

 ちゃんと米は炊く。無洗米で、炊飯器は三号だ。

 お気に入りはパスタなどのミートソースを。小分けして冷凍しておいた、レンチンした米に、これまた買うのが面倒だがパラパラしたチーズ。グラタンとかにかけるパルメザンじゃなくて食パンとかに乗せる四角じゃない、名前の知らないピザ用チーズを乗せて、結局レンチンしたなんちゃってドリア。いーじゃん。パスタソース。うどんにも米にもかけてけ、かけてけ。チーズ。乳製品摂れるぞ。賞味期限気をつけろ。あと食べきれない食パンは冷凍していい。同じく、今度は四角いスライスチーズとハムとマヨネーズでごちそう朝食だ。

 まあ、オレぎりぎりまで寝てたいから朝食用意しないし。冷蔵庫も今何も無いけどね。冷凍庫に冷凍ピザ、冷凍うどん、ラップで小分けにした三号の米だけがある。缶詰とレンチンのカレーと親子丼と中華丼とすき焼き丼も忘れるな。引っ越してすぐとか、一人暮らししてすぐ自炊しなくちゃ、って気負わなくても、バレなきゃ初期費用で数ヶ月は暮らせる。お気に入りは缶詰だ。ステーキまぐろなんてのもあるぞ。焼き鳥缶詰とか。燃えないゴミがたまるしにおいがGを呼び寄せても困るからオレは軽く水で洗ってる。

 そして、怠惰だと言われても仕方ない。これでもミネラルたっぷりのインスタント味噌汁やいざという時の鍋もミニまな板、ミニ包丁を先日買った。パスタもできる。

 茹でられるのだが、オレは、まだ一度もここのガスを使って料理したことがない。

「元栓は必ず閉めてください」

閉めないと、漏れる?爆発する?

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