第8話 第六ノ試練~第十ノ試練
第六ノ試練はゴブリンが相手ではなく、心臓部分にこれ見よがしにここが弱点だと言わんばかりの赤い宝石を付けた、大人並みに大きいマネキンが相手であった。
動きは俊敏ではなく、まるで操り人形のようにカクカクと動いており、第一ノ試練のゴブリンよりも雑魚であったため手早く赤い宝石を破壊し、殺すことができた。
ただ赤い宝石を破壊するときに、第四ノ試練で手に入れていた小汚いナイフが壊れてしまったのは頂けない。
ガスガスとナイフの柄の部分で叩いたにも関わらず、バラバラバラに壊れ、光の粒となり消えていったからな。
まるでゲームのエフェクトのように。
まぁ、それはいい。
不思議な現象であるが、それは気にしないでおこう。
それよりも、今後試練を受け続けると、このマネキンみたいなのが強化され相手することになるならば、ナイフではなく鈍器のような物が必要だろう。
だが残念かな。周りを見回しても鈍器武器となるモノは落ちてはいない。
そう思いながら、俺はふとマネキンに視線を落とし、こう考えた。
普通に木製のマネキンを武器にすればいいのではと
なのでこのマネキンを武器として使うことに決め、マネキンの解体を始めた。
マネキンの解体は、関節部分を引っ張れば手足や頭をスポンと抜けるから楽であり、不格好ながらも俺は鈍器を手に入れた。
こん棒・・と言っていいのかわからないが、ぶん殴るだけなら十分だろう。
第七ノ試練はやはりマネキンであった。
第六ノ試練よりも動きがなめらかであったが、まぁそれだけだ。
振り回してくる手足は木製であるため、殴られれば痛いのだろうが、動きが見え見えである時点で避けられないなどある訳もなく普通に赤い宝石を壊して勝利した。
そして第六ノ試練と第七ノ試練では続けて2ポイント贈呈された。
恐らく第十ノ試練辺りで、更にポイントが上がると思われる。
予想でしかないので外れる可能性があるがな。
そして俺の予想は良く外れるから期待はしていない。
第八ノ試練もマネキンであったが、この試練のマネキンには少してこずった。
人並みにスムーズに動き、攻撃をしてくるだけだったが、相手は全身木でできているのだ。
殴りも蹴りも普通に木刀で攻撃されているのと大差なく、受けきれなかったら普通に痛い。
ただ動きは単調である事には変わりないので問題なく殺せたが。
第九ノ試練ははっきりいってヤバかった。
なにがヤバいってマネキン野郎が武器を使い始めたからだ。
それも剣を使い始めた。
剣は錆びていたが、それでも俺の武器はマネキンの手足だ。
ギリギリ受け止めることはできても、数回受ければ斬られる。
故にかなりヤバかった。
途中振り下ろしてきた刃が、受けたマネキンの足に引っ掛からなければ軽く斬られていた可能性が高かったぞ。
第十ノ試練
第九ノ試練でどういう相手が来るのかはなんとなく予想していたが、やっぱり今回の相手も上等な剣を持ったマネキンであった。
ひねりなどなく、誰にでも予想出来る試験がそこにあった。
そして俺はそのマネキン野郎と戦い・・・何とか勝利することができた。
「はぁはぁ・・・イッテェな」
油断はしていなかったが、マジモンの剣と剣の戦いだ。
剣なんて生まれてこのかた振るったこともない。
もっと言えば剣は中世的なロングソード的な武器であったので、もっと馴染みが無かった。
ただ刀だったら使い慣れていると言う訳でもないので、なんとも言えないが。
「わりぃ彩菜。ドジ踏んじまった」
太腿を軽く斬られてしまった。
ただ深く斬られたわけではないので進もうと思えば進める。
だが、機動力が半減した状態で進むのは流石に危険だ。
また俺がドジ踏んで死んじまったら彩菜を助ける機会を失うことになるからな。
一分一秒でも早く取り戻したい気持ちはあるが、攻略報酬リストを見る限り、まだまだ試練は続きそうだ。
急いては事を仕損じるともいうし、ここは少し冷静になろう。
よくよく考えれば、俺は何の準備もせずに飛び込んだせいで、もう喉もカラカラだし、腹も減ってきているからな。
「少しだけ待っててくれな」
俺ははやる気持ちを抑えて来た道を戻ろうとした。
「あ? ここにあった道がなくなってやがる」
だが登ってきた階段は無くなっており、階段のあった場所は壁に変わっていた。
まさか一方通行なのか?
それは流石にキツイだろと思いながら、通路のあった壁を調べようと触れてみると、壁は青白く光り出した。
「なんだこりゃ? ちいせぇ器だな」
光が収まると、目の前にはとても小さな器がプカプカと浮かんでいた。
『試練ヲ一時中断シタクバ器ニ血ヲ捧ゲヨ』
俺から彩菜を奪ったいけ好かない野郎の声が聞えてきた。
「どこだっ! どこにいやがる!」
声を荒げながら周りを見回すも、周りにあるのは先程殺したマネキンの化け物だけしかいない。
『試練ヲ一時中断シタクバ器ニ血ヲ捧ゲヨ』
また同じような言葉を吐く、いけ好かない野郎。
どうやら定型文を話しているだけで、いけ好かない野郎自体はいないようだ。
しかしコイツの声を聞くと無性に腹正しくなるな。
『試練ヲ一時中断シタクバ器ニ血ヲ捧ゲヨ』
ムカつく声の内容はなんとなく理解した。
要するにこの試験とやらを中断するには、このプカプカ浮かんでいる小さな器に血を捧げればいいようだ。
血の一滴で満杯になりそう器に。
「・・・・・・・」
言葉に従うのは癪だが、このまま棒立ちしていても仕方が無いと思い、俺は斬られた太腿から血を一滴器に落とした。
すると器はまばゆい光を発生させ、俺の目をくらませた。
『試練ノ一時中断ヲ第十ノ試練場ヨリ確認シタ 次回カラ試練ヲクリアセネバ中断スル事ハ許サレヌ 心セヨ』
またもいけ好かない声が聞こえてきてイラつきを覚えたが、俺はそんなイラつきよりも、まばゆい光が無くなり、目を開いた時の光景に驚きを覚えることとなった。
「ここは・・・・・・・家か?」
俺は何故か我が家のリビングに戻ってきていた。
青白く発光する器と共に。
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