第6話 怪談:パンダ警告ランプ

この部品の山に埋もれそうな部屋。

この部屋の主は、発明家を自称している青年だ。

彼は発明で何でもできると豪語しているが、

作るものがピンポイントでしか使えないものが多く、

どうにも埋もれがちである。

ただ、特許をそんな発明で片っ端からとっているので、

意外とお金はあるらしい。

そのお金も次の発明に使っていて、

部品の山が築かれる。


僕はその彼の友人。

彼の発明を多分一番に見ることができる。

遊びに来ては発明の自慢を聞かされて、

そんなことよりとりあえず何か食べろよ、とか。

気晴らしに音楽聞こうよ、とか。

彼に気分転換を促したりしている。

今日はテレビをつけた。

連続殺人犯がどこかにいるらしい。

「怖いな」

僕がポツリと。

「そんなことより発明を見てくれよ」

彼は全くいつもの調子で。


今回の発明品は、

パンダが近くにいると警告が鳴るというもの。

彼がどこかで仕入れた知識によれば、

パンダは凶暴である。

だから、パンダが近づいたら、

警告が鳴るようにすればいいと思って作ったものらしい。

パンダなんて道を歩いているものじゃないし、

これがどう役に立つやら。


「起動してみよう」

彼がスイッチを入れると、

警告がビービーとなる。

「パンダ接近中、パンダ接近中」

僕も彼も首をひねる。

失敗だろうか。


その時、何気なく見まわした視界のテレビで、

連続殺人犯が、パンダの仮装をしていたことを知る。

映し出されたのは、パンダのマスクをかぶった男。

それが接近中ということは。


玄関の呼び鈴が律義に鳴る。

ドアホンの画像には、パンダ男。

その手には釘バットらしいものが。

その服には返り血らしきものが。


どうする。

どうする。


「パンダ接近中、パンダ接近中」

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