命で遊ぼう

廃色世界

かくして狂人は生誕した。

狂気と自由は紙一重

あぁ退屈だ。


俺の人生は、この一言で表せる。それほどに退屈でどうしようもないほど平凡な人生だった、その日までは。


退屈すぎて死にたいと本気で思ったことがある人はこの世に何人いるだろうか❓


そんな馬鹿な疑問を常々考えてしまうほどには俺の人生は退屈だった。


小学校から高校までは、いわゆる普通の県立や市立の学校に通っていて、特に打ち込める事も無く、ダラダラと惰性で過ごして時が経ち高校を卒業、そして大体中の上くらいの大学に進学して、そこからも人並みにバイトして、人並みに恋愛して、人並みに詐欺して、人並みに逮捕されて,人並みに釈放された。


そこからも俺はいろいろ人並みな経験を積んで、結果今はフリーターをやってる。


我が事ながらこんな人生やめてしまいたいが、やめたらやめたでそれ以上の退屈が待っている気がしてやめられない。本当に俺は退屈な人間だ。


そんな事を思いながら、その日も俺は惰性でバイト先に向かった。


「五逆君、君また遅刻だね。一体何回目だと思ってるの❓ 次やったらクビだってこの間言ったよね。」


バイト先に着いた時真っ先に言われたのがこれだった。本当に嫌になる、ろくに交通費も出さないくせに、たかだか十分かそこらの遅刻をいつもこの禿頭でデブで低身長と三拍子揃ったハゲた狸みたいな店長は言ってくるのだ。


いっそコイツを殺せばこの退屈も少しはマシになるかな?


そんな事を思いながらも、警察から逃げ切れる自信がないので行動に移さない俺はやはり退屈な人間なのだろう。


「何度も言われてるのに、すいません。次からは気をつけます。」


そんなその場凌ぎの定型文でいつもこの場は収まる。だから俺は今日も昨日の俺に習うようにそう言った。


ところが今日のハゲ狸店長は、余程機嫌が悪いらしく


「毎回それだよね、君。本当に分かってんの?ただでさえ犯罪歴のある君を雇ってあげてるんだから。遅刻されちゃたまらないんだよね!次やったら本当にクビだから」


なんて意味不明な事を言ってきた。これには俺も流石にイラついてしまった。


「えぇですから、次から気をつけると言っていますが? 他に何かようでもあるんですか?」


と睨みつけながら言ってやった。

ハゲ狸もこれにはビビったらしく、悔しそうに口をパクパクしたと思ったら、もういいよと言ってどこかに行ってしまった。

本当に馬鹿なやつだな、自分はバイトに色々と理不尽な事やってるくせに、遅刻なんて注意してくるからそうなるんだ。と気分を良くした所で俺も業務に取り掛かった。


それが起こったのは,そんな一幕が朝にあった日の、ちょうど太陽が空の半分を周り終えた頃だった。


ちょうどレジで、いつもタバコを買う時に文句を言ってくる迷惑客を相手にしていた時。

突然頭の中に声が聞こえてきたのだ。


『おめでとうございます。あなたは新世界に適合しました。つきましてはあなたに命題『命で遊ぼう』と天賦『狂命遊戯』を与えます。うまく活用してくださいね。』


その声を聞き終えた瞬間、止まっていた俺の頭は、混乱という形で動き出したが、その混乱はすぐに収束した。この声はなんなのか?命題や天賦ってなんなのか? 新世界ってなんだよ?

などの疑問はあれど、何かが変わったことは事実なのだろうという確信を持ったからだ。だってそうだろう? 俺の知ってる世界では頭の中にいきなり声が聞こえるなんて現象なかったし、前を見れば頭を押さえて混乱している迷惑客のオッサンがいたから、これが俺だけに聞こえる幻聴の可能性も多分ない。


だからその事実を一瞬で把握した俺の思考はある一点に収束した。


どうしたらこの何かが変わった世界でもっと楽しく生きれるだろうか? 


答えは一瞬で出た。そして俺は無意識にそれを行動に移した。

自分でも気づかないうちに足に力を入れ、それをバネに踏み込むと目の前にいつの間にかあった首に右手で横から勢いよく掴みかかる。ただでさえ混乱していた相手が避けられるはずもなく俺はそのまま左手もクビに持ってきて。両手にこれ以上ないくらい力を込めた。


「グッ‥…お前‥何してる‥手を…ガハ」


意識が追いついたときには、俺はもう目の前にいた迷惑客のオッサンを両手で絞め殺していた。


だがそれを自覚した時に俺が感じたのは、吐き気でも罪悪感でもなく、開放感だった。まだ命を殺したのがはっきり分かる感触がひどく心地いい。


そうだ俺はこのナニカが変わったであろう世界で自由に生きてやる。だからこれでいい。

あぁ最高の気分だ。
















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