第23話 遺跡攻略1・逆ピラミッドへの突入

 十月四日──


 今日は作戦開始の日だ。

 と言っても、アルカ達の先発隊が出発して隣の集落まで行き待機するだけだから、実質お見送りだ。

 郵便と荷物輸送のキャラバンにまぎれて一緒に行くため、トクサちゃんに書いてもらったノインへの手紙と一緒に輸送されることになっている。


 そしてこの二日間の間に、マルチ眼鏡で使用できるワードを一つ見つけることができた。

 それをとある装置に書きこむことで武器を作成することができたので、念のためアイテムポーチに収納しておいた。

 ただ、書き込んで正常に稼働したのはこの一種類のみで、他は書き込んでも正常には動作していないというのが正しいようだ。

 さてさて、これは何かの役に立つだろうか。


 十月六日朝四時ごろ──


 ついに僕たちの隊が出発だ。

 こちらはキャラバンに偽装も何もしていないただの騎士団の馬車だ。

 この日は月に数回ある各集落との人員交換──駐在さんの入れ替え日である。


 だから、こっちの騎士団のキャラバンは大きな偽装をしなくても問題ないということだ。

 一点、通常より人が多いということを除けば……であるが。


「では、行きましょうか」


 出立式を行うと、大規模作戦があると教えるようなものなので、大多数はすでに昨夜のうちから馬車の荷台で寝泊まりしており、本日乗り込むのは各馬車五名程度だ。


 俺たちが乗り込むと順番に馬車が出発する。


 ここから片道約二時間、作戦の合流地点までかかる。

 その間に馬車の中で武器や配置を最終確認しておく。

 ここからは馬車単位で一個小隊となって戦うことになる。


 午前七時ごろ──


 現場に到着して待機していると、アルカたちを乗せた馬車がやってきた。

 対面からこちらに戻ってくる馬車とすれ違う時に、積み荷の確認と言う名目で馬車を止め、路肩に馬車を停め、作戦開始のための合流を行った。


 馬車の側部につけられた出入り口からひそかに森の中に隊員が降り、それから遺跡を囲むように部隊を展開して、索敵用のレリックを用いて内部の様子を探る。

 これと併せてマッピングを行って行き、アイゼンバーグ隊の突入ルートを絞っていくのだ。


 ここまでは予定通りに何の問題もなく、準備が完了し、あとは開始の判断を待つだけとなった。


「内部のマッピング完了です。予想通り正面以外の出入り口のない逆ピラミッド式の地下四階の遺跡ですね。最下層までのおおよそのルートと分岐点を記載しましたので、これを参考に攻略をお願いします」


 ルート自体は複雑ではなかったので、分岐点ごとにサリオがトラップを設置して追撃を防ぎつつ、最奥にある広場を目指すことになった。

 そこに人質などが居なければ、引き返しつつ各個撃破を心がけることになる。


「よし、太陽が差し込み始めたから作戦開始しましょう。アイビーさん。南中までに我々が帰らない場合は、斥候を出して中の様子を探ってください」

「あぁ、心得た。貴殿らが全滅することはあるまいが、有事の際に備えておくよ」


 外にいた見張りの兵が交代するのを見届けてから、弓で迅速に見張りを倒してから、僕たちは陣形Aを組んで静かに入り口に向かうのだった。


「地上階に捕虜がいることはまずありません。有っても武器庫か搬出用のお宝置き場なので最速でトラップを仕掛けて下に抜けます」

「「「応」」」


 セシュの歌が始まり、内部の攻略が始まった。

 歌の範囲から出ないように気を付けながら、しかしながら急いで先へと進む。

 地上階は敵も多くないので最速で分岐路に行き、レリックのトラッパーから様々なトラップを設置していく。


 地下一階へ。


 ここからは敵も増えてくる。

 と言うのも、赤の盗賊団ではこの階は人員のベッドルームとして使っていたようだ。


 寝起きのゴブリンはケブラー素材の服も着ていなかったので、ヨシュア達がサクサクと手足にダメージを与えて行動不能にする。


 無力化した敵は後続の僕たちが心臓を突き刺して、確実に増援の数を減らしていった。


 何人かの女性捕虜はこの付近に囚われていたので、『ここから動かないように』くぎを刺して鍵のかかる部屋に固まってもらった。


 そして、サリオがレリックを使用し、トラップの設置と騎士団特有の目印でこの区画への立ち入りを禁止して先へ進む。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る