第20話 ブリーフィング

 会議室には何度か見た顔と、初めて見る顔があった。

「初めまして、アルカです。

アイビー隊で斥候やってます。

お酒大好き、年齢非公開、彼氏募集中!

以後よろしく」

「グラスキーです。

よろしくお願いします」


 このノリは苦手だ……。

 斥候と言う割には胸元は大きく開いてるし、ショートパンツにマントと言う派手なのか地味なのか分からないアンバランスな感じだ。

 その他にリザードマンの男性が同席していた。


「ヒイロだ。

セレーネ様の代理をつかまつった。

アイゼンバーグ隊の序列三位だ」

「初顔合わせは済んだな。

これから遺跡の攻略について各隊の役割を決めていく。

と言っても、このメンバーならいつもの手順でおおよそ決まっているが」


 決まっている打ち合わせは要るのだろうか……。

 このメンバーでの討伐は初ではないらしく、慣れてはいるとのことだ。

 しかし、遺跡の構造と敵の数によって、作戦に変更があるらしくブリーフィングは欠かせないとのこと。


 主に遺跡の周辺を取り囲み逃げ出した残党狩りと救助がアイビー隊、包囲網の中で大暴れして敵を狩り尽くすのがアイゼンバーグ隊の役割らしい。

 サポーターと脳筋の組み合わせか……確かに単純だが強力なチームだ。


「今回は地下遺跡だからトロールのネルラさんは、遺跡の中に行くのはキツそうですね」

「オークのトレハまでは行けそうなのか。

フルメンバーじゃねぇが、久々に派手な血飛沫が上がりそうだな」


 物騒な会話が続くが、復活の事を含めて考えると「人質も敵も全員血祭りにあげて、復活後に功罪を振り分ける」のが砦攻略の基本らしい。

 なら爆破でもいいんじゃないか?


「不測の事態が無ければいつも通りで良さそうだ。

それで、今回は彼を同行させたい」

「グラスキーって言ったな。お前さんナニモンなんだい?」

「アイビー隊かアイゼンバーグ隊の新入りになる予定だ。

今回で適正を見て配属になることになっている」

「初耳ですが?」

「初めて言ったからな」


 報・連・相と言う言葉はこの世界には無いのか?

 俺はずっと研究室でぬくぬくと後方業務に就けるとばかり思っていたのだが。


「とは言え、形式的な配属のため、配属後も神器研究には付き合って貰うことになる」

「ってことは、あのラボのメンバーか。

どうだ、変なやつが多いだろう?」

「それは否定しません」


 その後も他愛ない会話を挟みながら、現状の確認をした。

 形状的に入り口が複数あるような広い遺跡ではないこと、またこの手では深くても三階層程度で広さとしてはこの基地よりは小さいらしい。

 大型種が入れないため最大でもオーク程度までしかいないであろうこと、そのあたりを含めて必要な装備の数をはじき出していく。


「人数的にも馬車七台程度になるが、ちょっと多すぎて作戦がバレかねない」

「では、アルカ達先発隊が先の集落まで三台で行って、一泊してから折り返して現地で集合でいいかな」

「そうだな、アルカは詳細な場所まで知っているから、事前に木のどこかに目印を打っておいてくれ」


 目印と言うのは、一五センチほどの白い布を木に打ち付けておくことだそうだ。

 布なら何でもいいのではないかと思ったが、どうやらそうではないらしい。

 防虫処理をされていない布は最初は白いが、風雨にさらされることで徐々に虫に食われ、色が黄ばんでいく。

 布の色とボロボロさで、いつ頃設置された目印なのかを判断しているというわけだ。

 古すぎる印は意味が無くなるし、自然と無くなっていくのだそう。

 回収の手間が省けてとてもいい案だと思う。

 その他、色々と打ち方のルールがあるらしいが、詳細は慣れている隊員に任せよう。


「グラスキー殿は後発の第二班。

セレーネ隊長の部隊と一緒に突撃してもらう。

そのため、この会議の後はヒイロくんに同行してセレーネ隊との合同訓練をしてくれ。

以上、解散」


 二時間ほどで解散になったあとは、ヒイロに同行して昼食を取ってからセレーネ隊の訓練所に向かった。

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