第3話:この固有魔法が結構ヤバい件について

それから暫くは大図書館と書斎、騎士団と魔法師団の訓練所に入り浸る日々を過ごした。


 この前親父には


「ロイドみたいに魔法も剣術も家庭教師をつけてやろうか?私が頼めば誰でも引き受けてくれるぞ?」


と言われたが


「全部自分でできるからいいよ。侯爵家の威光のおかげで、大図書館や侯爵軍の訓練所には勝手に入って勝手に学べるから。誰にも邪魔されたくないし」


「ていうかそもそも、覚醒者の家庭教師なんて雇えないし。剣術や身体強化の魔法に関しては、親父を含めた騎士団の人たちに教わればいいしね」


「そ、そうか。でも帝国では十五歳になったら学園に入学する義務があるからな。それまでの五年間は自由に過ごしなさい。何かあれば力になるから直ぐに相談するんだぞ」


「わかった、ありがと。あ、そういえば学園に入るための勉強を教える家庭教師も雇わなくていいからね。この前過去問みたけど、たぶん独学で余裕だから」


「お、おう」



まあアルだからな。と語尾につきそうな感じで会話が終わった。


前世のアドバンテージを舐めるなよ!!!!!


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 そして選定の儀から一か月ほど、固有魔法≪光≫で実現できそうなことを前世の知識を踏まえて画策した。


 まず真っ先に思いついたのが光を収束し、一瞬で標的を蒸発させて、切断する技だ。

そう、レーザービームである。

 というか、一瞬敵の目に収束した光を当てるだけで目つぶしになると思う。敵を、回復のポーションか水属性の治癒魔法で治すまで失明した状態にできる。ベリーベリー凶悪だ。



 次は兄貴も言っていた光合成。これは普通に無理。なぜかというと、葉緑体がないからだ。

 しかし、覚醒者は似たようなことができる。普通の生き物は、魔力を使っても、呼吸や食事をしているだけで魔力は回復していく。魔力は空気中に含まれるし、植物や動物、魔物など生きているものすべてに含まれているからだ。


 ここからが重要なのだが、覚醒者はその固有魔法の属性への親和性が非常に高い。例えば固有魔法≪雷≫の覚醒者は雷に当たっても特に被害がないどころか、雷に含まれる魔力を一気に回収できる。


 何が言いたいのかというと、俺は日中外で日光を浴びれば、普通の人の何十倍も魔力を回収できるのである。覚醒者になってから、日光を浴びているときにすこぶる調子がいいのは、この性質のおかげであると考えられる。


 俺は歩くソーラーパネルになった。しかも魔力操作で近くの日光を自分に収束させることもできるので、昼ならいつでも魔力回復薬を滝のように浴びれる(普通は飲みます)。

 ちなみに夜も一応月の光を浴びれるので上手く収束させれば、魔力の回復スピードを上げられる。もちろん、昼に比べて効率は非常に悪いが。


 次はお待ちかねの光学迷彩だ。恐らく、これは自分の周りの光の屈折率を弄ることで、自分の後ろの景色をダイレクトに見せることができる。レーザービームと同様、まだ実践はしていない。



 あと自分の魔力操作が及ぶ範囲で、光が当たっている場所なら大体感じ取ることができる。いうなれば光探知。

 これも実践はしていないのだが、これから成長するにつれて魔力量や大きさ、形がもっとハッキリとわかるようになるし、範囲も広げられる気がする。



 そして剣術や体術で戦う上で、爆発的な活躍をすると思われるのがこの二つ。

 光速思考と光速反射だ。これは名前の通り、脳や体の神経の伝達速度を光速にする。


 光速思考では、視界に移る世界のスピードがスローになる。このほぼ止まったような世界の中でじっくりと考えながら戦闘を進めることができる。

 極めつけは光速反射だ。もし敵の攻撃が体に当たったら、その瞬間に光魔法で弾くことができる。この部分だけに身体強化で膨大な魔力を収束させ、攻撃を止めることもできる。


 この二つに関しては、騎士団の訓練に混ざっているときに試した。まだまだ慣れていないし練度も低いので、言い換えれば「ちょっと高速思考(反射)」である。



 ここで皆に問いたい。光は目に見えるものしか存在しないのか。


「否、存在するのである!」


 光には目に見えない紫外線と赤外線というものがある。ここまで言えば閃いた人もいるのではないかと思う。

 そう、赤外線カメラや赤外線通信、赤外線トラップなどの応用ができるかもしれないのだ。前世の知識って結構ヤバいよね。


 赤外線を通せば光のない暗視野であっても、温度を探知して対象物を明確に視認できるのである。

 また、前世の映画でもよく赤外線トラップが出てきたので、それを設置すれば離れていても自動で引っ掛かったものを認識できる。


赤外線通信や紫外線についても、時間をかければ何らかに応用できるかもしれない。


「よし、じゃあとりあえず昼にレーザーと光学迷彩を実践して、夜になったら屋敷の庭で赤外線の実験でもしてみるか」



 現在ちょうど昼なので、誰もいない魔法訓練所に入り、指先にすこし魔力を集める。まずは自分の作り出した光を収束させて的に放つ。

 すると当たった場所が焦げた。次はもっと魔力を込めて放った。そしたら的を貫通して訓練所の外壁も貫通しそうになったので、急いでキャンセルした。


 全力の魔力を出したり、日光を利用したりすると、とんでもないことになると予想できたので、やめておいた。日光を利用し、もっと光を収束させ上空に放ち、魔法で反射させ、雨のように地面に降り注いだらどうなるのか想像してみた。


「やっば。これはマジでやばいな。覚醒者が国家に対して抑止力になる理由がわかった気がする」


 ちなみに光学迷彩も普通にできた。基本的に生物は光を目で吸収して視認するので、夜でも利用できる。


 夜になってから自分の部屋で赤外線を通して視認してみたら、やはりこれもできた。高温の物体ほど強く視認できるので、ちょっと楽しい。


 赤外線トラップは、一応できた。しかし、なんとなくわかるのだが、遠く離れた場所に作っても起動できないと思う。


 しかし、心配はいらない


「ちょっと面倒だけど、赤外線トラップの魔力構築を読み解いて、新しい魔方陣を作るかな」


この世界には離れていても起動できる魔方陣が存在するのである。

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