5話 イトコ神との邂逅

 夜の闇よりも黒く焦げた地面の上に、所々灰と化した瓦礫が散乱している。絶望と死の煙が辺りの空気を包んでいる。数分前まで港だった場所に、四人は座り込んで黙っていた。


「なんで、だよ…。」


「ちくしょう!なんだよ、あの化け物!俺達が何かしたって言うのか?俺達はなんか悪いことでもしたか…?」


 言葉を吐き出したカツヒロの声は小さくなって消えていく。残酷な運命はいつでも突然やって来る。


「僕たち、これからどうしたらいいんだよ…。お父さんもお母さんも、みんないなくなった…。」


 タクヤの目からは涙が溢れていた。他の三人も同様に、目に涙を浮かべていた。


「アァァァァ、あの幹部Aとかいう奴、ぶっ潰してやる!」


 腹の底から声を絞り出し、カツヒロは言った。


「無理だろ。どう考えたって俺達に勝ち目はない。作戦が通用しない程の実力差だ。」


 ハルキはボソッと言う。


「じゃあ兄ちゃんは諦めろって言うの?僕たちがもっと、強くなればいいじゃないか!」


 タクヤが言った。


「簡単に言うな!強さってのは一朝一夕で身に付く物じゃないんだ!知識も無いまま闇雲に特訓したって意味無いんだよ。」


「じゃあ兄ちゃんはどうしろって言うんだよ…。」


 タクヤもハルキも、俯いて黙ってしまった。その時だ。突然天から一筋の白い光の柱が降りてきた。


「ま、眩しい、何だ?」


 光の柱の中、地上から数メートルの所に人の形をした何かが見えた。金と白の鎧のような物を身に着けた、光り輝く存在。まさに、神。


「だ、誰だ…?」


「私は、創造神ライト・ゴッド。光を司る、この世界の神だ。」


 厳かな低い声で、ライト・ゴッドは言った。


「神、様…?」


 突然現れた神に、四人は驚きの色を隠せない。


「そうだ。そして、お前たちにイトコパワーを与えたのは、この私だ。」


「俺達に、あの超能力を…。」


 四人は自分の両手を見つめた。この力は神から与えられた物…。


「いとこに力をくれたから、イトコ神だな!ライト・ゴッドって長いし、そう呼んでもいいですか?」


 カツヒロが言った。おいおい、神様に対して失礼だろ、と三人はツッコむ。


「まあ、そう呼んでもよしとしよう。とにかく、お前たちは戦う運命にある。四人で力を合わせ、ダーク・ゴッドを倒せ。」


「ダーク・ゴッド、闇の神…。光の神ライト・ゴッドと対になる存在…。」


「その通りだ、流石理解が早いな、ハルキ。ダーク・ゴッドは、人々のマイナスな感情、苦痛や憎悪から生まれる闇エネルギーを集め、自らの力にしようとしている。つまり、人々を苦しめようとしている訳だ。」


「そうか、そういうことか!」


「どうしたんだ、タイキ。何か分かったのか?」


 ハルキが言った。タイキは説明する。


「幹部Aはダーク・ゴッドの手下。だから、“幹部”と名乗ったんだ。そして、闇エネルギーを集める為に、六色島を壊滅させて人々を苦しめて殺した。そういうことですね?」


「その通りだ。ダーク・ゴッドは、私がお前たちにイトコパワーを与えたことを嗅ぎ付け、何度もダーク戦闘員を送り込んで調査をしていた。ダーク戦闘員とは、ダーク・ゴッドが作り出した兵隊のような存在だ。」


「じゃあ、奴らの本当の狙いは略奪なんかじゃなくて、俺達の力を測る為…。」


 イトコ神は頷いた。


「ダーク・ゴッドを、倒してくれるか?」


 四人は顔を見合わせた。イトコ神は簡単に言うが、相手は神だ。あの幹部Aよりも強いに違いない。


「っていうか、そもそもイトコ神さんが戦ったらいいんじゃないんですか?神同士の戦いなら互角に戦えるし、そっちの方が良さそうなんじゃないんですか?」


 ハルキが言った。確かにわざわざ四人に頼むより、圧倒的に強い神自身が戦った方が手っ取り早いに違いない。


「それが、不可能なのだ。」


 イトコ神は顔をしかめて言った。その後、神という存在について、長々と話し始めた。略すると、神はいわゆる天界から下界に直接干渉することは出来ないらしい。ただ、ダーク・ゴッドは何らかの方法を使って下界に拠点を作り、そこで勢力を拡大させているとのことだ。今こうやって現れているのはホログラムなので、情報や、ほんの少しのエネルギーを与えるくらいしか出来ないという。


「戦ってくれるか?」


 イトコ神は四人に尋ねた。四人は顔を見合わせる。突然戦ってくれ、と言われても困る。でも、幹部Aは倒したい。


「…どうしたい?」


 タイキが三人に聞いた。


「僕は絶対強くなる!」


「俺は、戦いてぇ。あの野郎、絶対ぶっ潰す。」


 タクヤとカツヒロは口々に言った。


「俺も、何をすればいいのか分からない。でも、ここでうずくまっていても何も変わらないは事実だ。」


 タイキは三人を順番に見回しながら言った。


「それに、これ以上俺達みたいな被害者を出したくもないしな。」


 ハルキが言葉を続け、頷いた。


「決まりだな。それでは頼んだぞ。」


 イトコ神はそう言うと、姿を消した。ここから、長い戦いが幕を開ける。

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