湊の結論

とうとう、えりの彼氏のパブロが帰ってきてしまった。


パブロは、遠恋前は、谷川家に同居していた。

えりとパブロは、一緒に暮らしていく中で、えりとパブロはお互いを好きになったが、程なくして、遠恋に。

2年の遠恋を了承できたのは、お互い、ずっと好きでいるのが、直感的にわかっていたからだ。

そんな2人が、また一緒に暮らしだした。


湊は決定的に失恋した。

パブロの話をするえりの笑顔は自分といる時と、その比ではなかった。

(もともと勝ち目なかったんだな…)



とある日、湊はえりの家で遊んでた春乃を、迎えに行った。

湊はチャイムを鳴らした。

玄関を開けてくれたのはパブロだった。

「あ、どうも」

湊は適当に挨拶した。

パブロは、数回瞬きをした。

「今、春乃ちゃん、孝司とゲームしてて、それが終わるまで待ってって」

「…御世話かけてます…」

2人とも、なんとなく無言になった。


「…えりと仲いいって?」

「そだね」

「へー」

パブロは何を考えているのかわからないような顔で言った。

(何か腹立つな)


「えりの事、奪おうとしてたんだけどね」

「…。…え?」

「俺、えりの事好きなんだけど…」

「…そうなの?」

パブロは、少し驚いたように言った。

「そうだったの」

もう過去形にするしかなかった。

「…意外とマジメなんだな。わざわざ俺に言うなんて」

「だな…。なんでだろ…」

湊も自分がわからなかった

「…ま、もう関係ないからかな…」

「告白した…?」

「してないよ」

湊はイラッとした。

「何で?」

「あんたが戻って来なかったらしようと思ってた…」

「真面目だな…」

「腹立つな…」

湊はパブロを睨んだ。


「良かった…」

パブロは下を見て言った。

「何が?」

「いや、えりが、湊の事話してて…」

(湊って…。呼び捨てかよ…)

「何?」

「ずいぶん仲良いみたいだったから…」

「仲いいよ」

「湊が、本気だしてたら…。今どうなってたか、分からなかった…」

「バカにしてんの?」

「してないよ」

「…本気出しても、変わんないよ…。知ってんでしょ?」

「…うーん。でも、わかんなかったよ」

「やっぱ、バカにしてる」

「湊が、いいヤツで助かった」

「…。俺、超常識人なんで…。腹黒いけど」

「ふーん…」

パブロは何か考えるように言った。


「なんだよ」

「あ、いや、圭太よりよっぽど話しやすいなと思って…」

パブロはポロッと言った。

圭太はえりの幼馴染だ。

昔、えりが好きだった人だ。


〈※小説・彼は魔法使いで、意地悪で、好きな人参照(同作者)〉


「…あぁ。あれは、優等生すぎる…。天然だし…」

「そうなんだ。絵理がさ、好きだったやつだから、嫌いなのかと思ってた」

「嫌いだったの?」

湊は意外そうに言った。

「友達には、ならないなとは思ってた…。やっぱり嫌いなんだな」

湊は片方の口角を上げた。

同感だったらしい。

(人のこと気軽に嫌いとか言うんだな…)


「パブロ君は、圭太よりの人かと思ってた…」

「全然。そもそも、えりと同居したの、自分の家、追い出されたからだし」

「え?」

「聞いてなかった?」

「あんまり、その辺聞かなかったから…」

「どっちかと言わなくても、ろくでもない人間だね」

パブロは笑った。

「よくえりが好きになったね」

「ね」

パブロは笑った。

湊も少し笑った。


「ホント圭太よりしゃべりやすい」

「どんだけ嫌いなんだよ」 

「逆に湊が、いいのか」

「は?」

湊は複雑な気持ちだった。

「えりが、仲いいのわかる気がする」

「ムカつくな」

「あははっ。何で?」

「好きだった子の彼氏に言われたくないでしょ」

「別にいいじゃん」

「無神経だな」

「そう?」

「人の事言えないけど、性格、悪いね」

「そうかな」

「自覚してないんだ…」

「…」

「俺はしてるよ」

湊は、ちょっと偉そうに言った。

「してて、それなの?」

「…いいじゃん、別に」

「いいけど」

「…えりだけ…。知ってるからこれ」

「そうなの?の割にはポイポイ出てくるね」

「…」

湊は言われて、気がついた。


「あーっ。やだなぁ。帰って来なければよかったのにね」

湊の言葉に、パブロは面白そうに笑った。


「今度、家に遊びに行っていい?」

「うん?」

「一応今まで遠慮してたんだ」

「意外とちゃんとしてんね」

「ホント嫌だ」

湊は顔をしかめた。

「俺、ちゃんとした友達、えりしかいないから。パブロ君に、全部取られると困るの」

「…へぇ。友達多そうだけどね」

「多いよ。人気者だから。でも、偽ってるから」

「アハハッ。そうなの?」

「うん。だから、遊びにこさせて」

「…下心ない?」

「…。あのさ、彼氏持ちの子と2人で会おうなんて思ってないから。パブロ君も一緒でいいの」

「俺?」

「そう、俺」

湊はパブロを指さした。


「さっき話やすいって言ってたじゃん」

「?うん」

「じゃ、いいじゃん」

「いいけど」

「意外な所に、本性出せる人、もう一人見つけちゃったから…」

「え?!俺?!」

「そ、俺」

湊はパブロを指さしてにっこり笑った。

「……」

「俺、2年間、えりに告白もしないで、支えてきたんだよ?」

「うん…」

「じゃ、いいよね」

「う…ん」


「お兄ちゃーん。ごめん、遅くなっちゃった」

「遅い」

「ごめんなさい」

湊は春乃の頭をポンと叩いた。

「帰ろう。じゃ、パブロ君、またね」

「うん…。また…」

湊はニヤッと笑って、帰って行った。


(あぁ、こういう奴か…。…まいっか。嫌いじゃないし…。たぶん)

パブロは去っていく湊の背中を見ながら、思った。


湊は、今日まで全てを失ったように思っていた。

でも、まさか、えりの彼氏があんなに話しやすい人間だとは思わなかった。

(…。俺の片思いも、全部が無駄になった訳じゃなかったんだな…。あ、哲学入っちゃった…)

湊は自分の結論に酔った。


                 






☆彼は 魔法使いで、意地悪で、好きな人(えり&パブロ)


そのスピンオフ

☆幼馴染みの恋15歳 エピソード1

☆幼馴染の恋16 歳 エピソード2(孝司&春乃)


☆ずっと好きって言いたかった(えり&湊 パラレルワールド)


もよろしくお願いいたします。


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