オルガノン教会にて……

 二人の街人を見殺しにしておきながら、俺は目の前にある古い教会に急いで駆け込んだ。ドアを思いっきり叩くと外から声をかけた。


「おい、神父のおっさん! 中に居るんだろ!? 聞いてるのかシプソンのおっちゃん!!」


 普段はよほどの事がない限り、大きな声なんか出さないのに。今はここぞとばかりに大きな声を出して張り上げた。


「緊急なんだ、今すぐここを開けろぉ!」


そう言ってドアに向かって激しくタックルした。すると中から年老いた神父が出てきた。


「おぉ! その声はアル、ぐはっ……!」


神父が扉を開けた瞬間、ドアに向かってタックルしたので、そのまま激しくぶつかると老人を一緒に巻き込んで中に入った。神父は物凄い勢いで、後ろの長椅子にふっ飛ばされた。


 俺も目の前の大きな柱に頭と顔をぶつけると、額を擦り剥いて顔から鼻血が出た。その弾みで一瞬、自分の憶が飛んだ。二人して見事にコントのような真似事をしてしまった。むしろ絵面的にも、超マヌケだった。


「クッソ、いきなり開けるから頭と顔をぶつけたじゃねぇかクソ神父のジジイっ!!」


『それはこっちの台詞じゃ、このくそ坊主!! お前は昔からその荒っぽい性格がまるで変わっとらんな。死んだトム爺さんがあの世で泣いとるぞアルス!』


「うるせぇ、お前がさっさとドアを開けねーからだろ! この老いぼれクソジジィ!」


「何を!? こやつ何て生意気なんじゃ……!」


「生意気で結構。コケコッコーだぜ、ばぁーか」


「うぬぬっ!!」


 アルスは年甲斐もなく、小学生レベルの態度をとると、あっかんべーして自分のお尻を叩いて、老人を徴発した。そのフザけた態度を見て神父は一瞬、殺意が芽生えた。


「あ。そんな事よりも今、街が大変なんだよ! アンタも外の騒ぎを見ただろ!?」


「ああ、そのことなら知っておる。どうやら大変なことが起きてしまったらしい……」


 神父は深刻な顔で表情を曇らすと、開いている扉を再び閉ざした。老人のその言葉にアルスは尋ねた。


「大変なことってなんだよ……?」


「まさかこのような事態が起こるとは……」


 神父は彼を無視するとある所に向かった。


「あ、おい! 待てよシプソンのおっちゃん! 一体何処に行く来だ……!?」


 彼は独り言を呟くと奥の礼拝堂へと向かった。その先の中央には、片方の翼が生えた大きな女神像がいた。その表情は慈愛に満ちた聖なる女神のようだった。アルスはそこで思い出すと話した。


「ああ、そうだった。思いだした! 俺の親父が言っていたんだ。女神様が壊れたって。それで街に張ってあった結界が解かれたかもしれないって言ってたんだ。おい、その女神はこの事か!?」










 



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