悲壮感。

――俺の名前を呼ぶな!!――



『うぉおおおおおおーーっ!!』


 近くにあった木の棒を咄嗟に掴むと、そのまま牛に向かって突進して、勢い良くジャンプすると宙を舞って背面を取った。そして、気合いを込めた真空斬りで斜めに斬った。


 木の棒から繰り出された一撃の真空斬りの威力は、硬い牛の皮をいとも簡単に切り裂いた。牛は悲鳴を上げるとそのまま前に倒れた。俺は地面に軽やかに着地すると背中を向けて二人に話した。


「ここは危険だ。去るがよい、力を持たぬか弱き者達よ。跡はこの私に任すが良い」


「もしや、貴方はまさしくあの伝説の勇者アルス様では…――!?」


「さあ、行くがいい。ここは今戦場だ。老女よ、その小さきか弱き者を頼む!」


「勇者様、きっと私達の事を助けに来てくれると思ったわ!」


「当たり前だ。私はいつも、民の心と共にある。また助けが必要ならば私をいつでも呼ぶが良い。さすれば再び汝らの祈りに応えよう…――」


「おお、アルス様……!」




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