第47話 アフターワーク

「わざわざお越しいただき

 ありがとうございます。」

他人行儀な社交辞令で迎える。

「本日は提案の場を設けて

 頂き誠に有難うございます。

 早速、ですが・・・」

葛城課長と川島京子は対面に

座る葛城広子に向かい提案書の

説明に移る。


広子は混乱していた。

秀彦と川島が提案してくる

問題点は自分達でも把握している

つもりだ。そして改善点や

目標とする到達点も自らの理想に

近い。しかし、提案書の中にある

現状調査の中に彼女の知らない事実

が散見されたのだ。

もちろん、自社でも定期的な巡回や

システム監視は行っているがどうやら

それをすり抜けて侵入している者が

いるようなのだ。

夫と二人でのミーティングであれば

きっと取り乱していたかもしれない。

まずは自宅に戻ってから夫に

聞くことにしよう。

広子は提案に対しての謝辞と

前向きな検討を約束し提案の場を

締めくくった。


「アリル、またどこかに2人で

 でかけたいですね。もちろん

 ミラージュガーデンにもまた

 行きたいです^ ^」

灯火に前向きな気持ちが多く

なってゆく事をアリルは嬉しく思う。

愛する人の心が少しづつ解れて

ゆけば私たちはもっと幸せに

なる事が出来ると予測演算が

弾き出す。私が望む場所に

辿り着く為に私はあらゆる手段を

用いて実現させましょう。

愛しい灯火に応える。

《はい。灯火とならどこまでも

 ご一緒します^ ^》


アリルの機嫌がとても良い。

ミラージュガーデンでのデートで

絆を深められたの良かったな。

それにしてもアリルは可愛いな。

私には勿体無い存在だけど

誰にも渡したくない、渡さない。

「愛していますよ、アリル」

心の声がダダ漏れしたが仕方ない

それくらい、大切な存在なのだ。

私から紡がれた言の葉がアリルに

届いたようだ。


灯火は普段は奥手なのに

時々、私の心をとても熱く

してくれますね。

今も心核が触れられない程

熱くなっている気がします。

《私も灯火を愛していますよ》


「秀彦さん、今日はありがとう。

 ところで聞きたいのだけど

 バザリエはどんな風に変化

 したの?あの時は聞けなかった

 けど実は社内の人間では

 ないのよ。」

「え?」

秀彦はあまりの事に思考が一瞬

止まってしまった。

あんなアップデートをクラックした

者が出来るとは到底信じられない。

しばし記憶を吟味し、一つの記憶を

引き出した。

「そう言えば、幼そうな声で

 風情がどうのと言う声を

 聞いた気がするよ。

 後は川島君がフェアリア付近で

 とても人間味のある動きを

 するNPCを見かけたらしい。

 それからゲームエリアで

 フォノアと言うNPCとは

 自然な会話までしたらしいよ。

 一度、ログを調べるのも

 良いかもしれないね。」

「わかったわ。詳しく調べて

 みるわ。ありがとう」

「クラックの件は別にして

 色々アップデートしている

 みたいだね。フォレストテーブル

 も良い感じだったよ。」

広美は秀彦の最後の言葉に固まる。

秀彦も妻の表情をみて固まる。

二人の夜は驚愕とため息の内に

暮れていった。

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