第42話 クロスロード

視覚の中に正面の風景以外に

調査用に設定された様々な

情報アイコンが表示され

意識するだけでポップアップする。

京子は遊園地エリアに到着すると

辺りの確認を始めた。

「現在の入園者数が2000名で

 ダイブ客が30%の600名かぁ」

某遊園地だと1日4万人ほどが

損益分岐点だったはずなんだけど

ここはどれ位の入園者数がいれば

よいのかしら。

それにしても2000名というと

多いように感じるけど実際見てみると

閑散としているなぁ。

もっとNPCを増やした方が良いかも。

課長からの依頼を達成する為に

どうすれば良いか思案しながら

もう少し、詳しく見て回ろうと

彼女は意識を前進に切り替えた。


フォノアは興味深そうに

様々なアトラクションを眺めながら

散策していた。

《お姉さまの位置はあちらですから

 私は逆の方向に参りましょう》

アリルと灯火の視界に入らないよう

注意しながら初めての風景を楽しむ。

彼女はゲームセンターに辿り着くと

一つのゲームに興味を持ち向かって

行った。


《ん~ご主人の位置がここで、

 フォノアはここ。それから川島と

 いう人がここ・・・

 せめてご主人の方に行かないよう

 僕が誘導しないといけないね。》

彼は思案しながら川島のいる場所へ

移動を始める。


「何あれ・・・NPC反応なのに

 とても動きがスムーズなんですけど」

京子の目の前をテテテッと走る

子供を見かけ驚愕する。

基本NPCは規則正しく動く。

遊園地なので若干の人間っぽさを

演出しているがそれでも分かるのだ。

「テスト用のNPCかしら、ああいう感じで

 動き回るのがいればダイブしている人も

 楽しく感じるかもしれないわ。」

彼女自身が感じた素直な感想のままに

スカウトの後ろを追ってゆく。


彼女は射的用の銃を握り

的に目線を合わせる。

《こんなものですの?》

徐々に増えてゆくカウンターの数字は

彼女を満足させるものではなかった。

もう一度、銃を見つめ意識を集中

させると彼女の体が一瞬光った。

小さく微笑みそして・・・

《接続完了

 フルバーストですわ^^》

カウンターの数字が秒速より早く

変わってゆく。

楽し気に的を射る彼女。

「貴女、すごいわね・・・」

絶句する様なため息交じりの声に

射撃を止める事なく

フォノアは振り返る。

《ごきげんよう。

 独占してしまったようで

 申し訳ございませんわ。

 交代いたしましょ》


京子はあまりの光景についつい

声をかけてしまったのだが

その後、急に銃を渡されて困惑する。

彼女の反応はNPCのそれであるが

普通に返答してきた事により大きな

驚きを覚えたのである。

《遊び方がわかりませんの?》

そんな問いかけに我に返り

「ええ、初めてなので教えてくれる?

 ちなみに私は京子です。よろしくね」

《申し遅れました。私はフォノアです。

 では遊び方はこうですわ》

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