転生したら体長100m超の巨大生物で人類の敵でした 〜世界最強だったはずなのに何故か最下層になりました編〜

同歩成

第1話 もう何も怖くない?

 体長100mを超える巨大生物、その巨大生物の第一の脳に僕は転生した。僕は転生した直後、身体を動かすことも出来ず暗闇の中で途方に暮れていた。


「こんにちは」


 途方に暮れる僕に話しかけてきたのは第二の脳だ。僕は第二の脳と会話をしているうちに、第二の脳を別人格としか思えなくなっていく。そこで僕は第二の脳に名前を付けた。



 ニノ



 続けて僕は第二の脳ニノの姿を想像した。人間の姿があれば寂しくないし、毎日の生活が華やかになると思ったからだ。第二の脳ニノの擬人化だ。

 僕の想像した第二の脳ニノの姿は、僕の好み100%で妄想した銀髪の美少女。第二の脳ニノは僕の想像した銀髪の美少女の姿を気に入ってくれ、その姿は定着した。だから僕の視界には、いつも銀髪の美少女ニノがいる。


 僕は視界にいる美少女ニノのリアルな存在感につい口走る。


「ニノ、可愛いな」

「……この姿は第一の脳あるじの想像ですよ?」


 そう言ってニノは微笑んだ。


 こうして生まれた僕とニノという存在。そんな2人で1人、いや2人で1匹の巨大生物が巻き起こす、すこし不思議な物語を聞いて欲しい。



 ◇◇◇



 僕が転生した直後、僕らは人類にとても恐れられていた。

それもそのはず、僕らは頭から尻尾の先までで100m以上の巨躯であり、頭部には3本のツノが生え、体表は濃い焦茶色。ひと目で怖い。

 そんな僕らは『パウンド』と呼称され、巨大生物の中でも最強のカテゴリーであるデルタ級に認定されて、人類から最大級に警戒されていた。


 人類に恐れられていた僕らだけれど、人類と敵対するのではなく、人類から逃げ回るわけでもなく、共存したいと僕らは願った。

 人間と共存したいという願いのために、僕らは精一杯の努力をした。まあ努力というか、鳴き声を挨拶に見立て、それをゴリ押しして、様々な試練を乗り越えてきた。


 挨拶に見立てた鳴き声は、人類に対する僕らの必殺技だ。


『ゴガオオオン!』(こんにちは)

『ピヤァァァン!』(ありがとう)

『グルグガガアアン!』(やめなさい)

『キュルルウウウン!』(ごめんなさい)


 この4種類だけだが、とても役立つ。困ったときは挨拶だ。

 とにかく僕らは、挨拶を駆使しながら頑張って、人類と仲良くなった。今では全人類とトモダチだ。

 世界各国の大統領など政府とのコネもあるし、軍部とも親交がある。

 僕らは人間の言葉も覚えたし、モールス信号で簡単な言葉を伝えることも出来るのだ。

 歴史上、なかなかそんな巨大生物はいないだろう。


 そして僕らは超強い。

 人類を含めた全ての生物を殺戮する黒い瘴気を放つ暗黒巨大生物を、何匹も倒してきた。

 暗黒巨大生物は、人類が歯が立たないほどの強さを持つ。でもそれらを倒した僕らはもっと強い。


 僕らは暗黒巨大生物だけではなく、デルゾン島に生息する最強と言われる巨大生物をも倒して強敵ともとなった。


 これならば世界最強レベルと言っても自惚れではないだろう。


 つまり今の僕らは、人類とトモダチで、世界最強の巨大生物ということだ。

 もう何も怖くない。そんな世界で、僕らは平和な生活を楽しんでいる。


 そして今、僕らはどこか知らない海にいる。

 僕らは全人類とトモダチだし、超強いので他の巨大生物を恐れる必要は全くない。

 世界中どこの海に行っても安心なのだ。


 僕らの目の前で、巨大エビが巨大イカを襲い始めた。

 巨大エビは、長い手の先にあるハサミを器用に使い、慌てて逃げようとする巨大イカをガッチリ捕らえた。

 巨大イカは、必死にもがくものの巨大エビに食べられてしまう。しかし、その巨大エビも新たに現れた巨大タコに襲われて、儚くも食べられてしまった。

 これが巨大生物の生態系。どこの海でも見かけるいつもの光景だ。


「タコでも食べる?」


 僕はニノに尋ねる。

 巨大イカに勝った巨大エビ。その巨大エビに勝った巨大タコを相手にしても僕らなら余裕で勝てる。生態系の最上位なので、好きなものを食べられる。


「うーん、そうですねぇ」


 食いしん坊のニノだけど、今日の気分は巨大タコではないようだ。

 このところ巨大タコを食べ過ぎて飽きたのかな。


 そんなことを思った、その時だった。


 巨大エビを食べている巨大タコに、凄い勢いで巨大な何かが襲いかかった。

 二枚貝だ。巨大な二枚貝が巨大タコを襲っている。まさか二枚貝がタコを襲うとは。


 それにしても何の貝だろう? 凄く元気に泳いできたけれど。僕らは、しばし考える。

 そうだ、泳ぐ貝と言えばホタテ貝。ということは、もしかして、あれはホタテ貝ということか。


 僕らの目の前にいるのは、とても巨大なホタテ貝。

 貝殻の全長は、100mほどありそうだ。


 ど迫力の巨大ホタテ貝は、巨大タコの足を5本ほど貝殻で挟み込み、その勢いのまま巨大タコの足をちぎり取る。凄いパワーだ。

 巨大ホタテ貝に、足をちぎり取られてしまった哀れな巨大タコは、隙をみてダッシュでその場から逃げ去った。

 巨大ホタテ貝、圧倒的な強さだ。


 僕らは、初めて見る巨大ホタテ貝の戦闘に呆然としたが、ニノが我に返り、話しかけてきた。


「ホタテ貝、食べてみましょう!」


 さすがニノ。やっぱり食いしん坊さんだ。ニノはもう食べたくて辛抱できないと言った表情だ。

 確かに僕も美味しそうに感じる。巨大ホタテを食べてみたい。


「そうだね。ホタテ狩りといこうか」


 いくら巨大ホタテ貝が強いと言っても、僕らの敵ではないだろう。何しろ僕らは生態系の最上位。

 僕らはいつもの要領で、まずは巨大ホタテ貝へ向かって挨拶をする。


『ゴガオオオン!』(こんにちは)


 宣戦布告というか、お食事前の挨拶というか、そんな感じだ。戦い前のルーティンとして行っている。


 挨拶のあと、僕らは巨大ホタテ貝に襲いかかった。巨大ホタテ貝も全力でぶつかってくる。おお、なかなかの力強さだ。

 しかし、負けない。僕らはがっしりと両手で貝殻を掴み、渾身の力でこじ開ける。


「おおおおおおおっ」

「んんんんんんんっ」


 メリメリッ! ガバァッッ! パカリッ!


 開いた。


「ぜぇぜぇ」

「はぁはぁ」


 僕らは、短時間の戦いではあったが、全力で頑張った。


 その甲斐もあり、中には巨大で立派な貝柱がある。ツヤツヤと輝いていて、とても美味しそうな貝柱だ。

 直径30mぐらいありそうだし、食べ応えも十分だろう。


「美味しそうですね!」


 ニノは初めて見るホタテの貝柱にヨダレが出ているのではないか。ジュルリ、そんな感じだ。

 僕が見ても確かにとても美味しそう。


「さっそく食べよう!」


 僕はニノに返事をする。そして。


 ガブリッ!


 僕らは巨大ホタテ貝の貝柱へ豪快に噛み付いた。


 美味い。ほんのり甘みがあり、とても美味しい。プリプリとした食感だ。今まで食べた中でも最上級に美味い。


「美味しいですね!」


 ニノも大絶賛だ。表情が緩みまくっている。

 その後、僕らは巨大ホタテ貝を探して5匹ほど美味しくいただいた。もう満腹だ。


「ホタテ貝、凄く強かったけど美味しかったね」

「はい、頑張りました。その分とっても美味しかったです。また食べたいです」


「そうだね。また今度ね」

「はい。今日はもうお腹いっぱいですね」


「ホタテ貝の居場所、覚えておこうね」

「はい。また来ましょう」


 と思ったが、ここはどこだろう。見たことがない海域だ。


「って、ここどこだろうね?」

「何も考えずに遠くまで来てしまいましたね」


 そんな話をしているうちに何故か僕らは白い光に包まれてきた。この白い光は進化の時に見たものだ。


「あれ? これって進化の時に見た白い光?!」

「そうですね。進化するようです」


 僕らは死にそうなほどのピンチになると、その状況に合わせて進化して、その度に強くなってきた。


「えっ、死にそうになってなくても進化するの?!」

「うーん、平和な生活に合わせて進化するのかもしれません」


「ええ、そんなこともあるんだ!」


 僕らは白い光に包まれた。僕らは更に強くなってしまうのか。僕らが次に進化する先はなんだろう。










〜あとがき〜

お読みいただきありがとうございます。

もし面白そうだと思えるところがありましたら、執筆の励みにもなりますので、気軽にフォローしてもらえると嬉しいです。


この作品は『転生したら体長100m超の巨大生物で人類の敵でした』の続編ですが、単体でも分かるようにしたつもりです。

ただ未読の方は前作の第一部だけでも見て頂けると分かりやすいかもしれません。お時間が許せばそちらも是非。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る