宇宙の笛

 澄んだ星空を見上げると、びっしりと詰まった恒星がするどい眼のようだ。恐怖すら覚える。
 一方で漆黒の広大な宇宙に対しては、人は、今度は郷愁や寂しさを胸に抱くものらしい。
 何故かは分からない。
 分からないのだが、昔から宇宙を舞台にした作品には、静かな抒情性やノスタルジアがよく似合った。
 SF黎明期の趣きがあるこちらの掌篇を読むと、遠い宇宙と、真冬の押し入れの中の孤独が繋がっているような気がする。
 縹渺とした漆黒と、少し生温いような虚無。
 頭の中で健気なイルカが鳴いている。
 衛星トリトンは、36億年後に消えるそうだ。