第21話

レジャーランド建設予定地に1軒だけ居座っている家がある。

「私は絶対に出ていかないんだから!この土地が好きなの!レジャー施設を作るのは勝手だが、この土地だけは渡さないよ!」


この居座っている家の話を聞いて、黒川社長が動き出した。手には山のようなお菓子の袋を持っている。

「こんにちは、ここが桜井さんのお宅ですか?今日はお話を伺いに来たんですよ。分かります、この土地を離れたく無いんですよね。この辺りは自然が豊かですものね。私も一緒に住もうかなあ?」


桜井さん

「あなた誰よ?一緒に住もうだなんて、たわ言ね。こんな女やもめの何処が良いって言うのよ?夫には先立たれ、子供達は皆出ていって……天涯孤独なのよ、寂しいわ。良いこと!絶対に私は立ち退かないんだから!」


黒川社長

「分かるわあ、ご主人に先立たれて……子供さんも一人また一人と街へ出ていって……子供さんは帰ってくるの?んっ?年に何回か?そう良いお子さんね。うんうん、ちょっと桜井さん美形ね、肌に気を使ってるのね。うんうん、やっぱり良い化粧品に限るわよねえ。絶対そうよ、まあ桜井さん元が良いんだけどね。えっ?冗談じゃなくてよ、ホホホ。好きなタイプだわ桜井さん、私と良いお友達に成ってよ。うんうん、私の家に来なさいよ。私の化粧品も使うと良いわ、世界最高級よ、桜井さん絶世の美女になっちゃうわ。うんうん、贅沢させてあげるよ。私の服もシェアしてあげる。うんうん、何て言うの、下のお名前?そう純子さんなんだ。良いお名前ね、美しい桜井さんにピッタリの名前。うんうん、今日から来れば良いわ。うんうん、ずっと一緒に居れば良いじゃない。純子さんの事大好きになっちゃった、キャハハ。もうハグしちゃう。チュッチュッ……。」



かくして最後の家は買い取られた。

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