第43話 新魔法の授業(1/4)

 

「この世界には火、水、風、土、雷、光、闇っていう“七元素魔力”があります。これを放出できるようになるのが魔法の基本です。まぁ、編入試験をクリアしてるみんななら知ってるよね」


「はーい。知ってます!」


 リエルが元気よく返事してくれる。


 こういう生徒がいると、先生って助かるんだなって思った。


「どの七元素魔力を放出できるかは種族や個人によって変わります。例えばエルフなら風属性の魔力は放出しやすいけど、火属性のは放出しにくいとかね」


「獣人は火と土が得意にゃ! あと稀に雷も」


「人族は全体的に適性が出やすいですね。光や闇は少しレアですが」


 ミーナとアルメリアも積極的に参加してくれた。


「基本的なことだと思うんですが、僕たちが新魔法を使えるようになるのと何か関係があるんですか?」


 フリストは良い質問をしてくれる。


「これはただの確認だよ。みんなが自分の得意な属性を把握しているかどうかの。新魔法は全部で32個ある。そのうち攻撃系魔法は8。防御系魔法は12ある。残りの12個は生活や旅、冒険を便利にする魔法だね。魔法は便利だけど、ひとりで全部を使おうと思わない方が良い。自分の適性に合った魔法と、自分が目指す将来像に向かって必要な魔法を選択した方が強くなれるし、失敗が少ない」


 クラスメイトたちにも同じようなことを言ったけど、全部アイリスにしてもらったアドバイスだ。


「失敗って、どんな?」


「例えば適性のない魔法を無理に使おうとして、魔力を余計に消費しちゃったり、そもそも発動しないこともある。魔物と戦ってる時に、魔法が不発だったらピンチになるでしょ?」


「た、確かに……」


 リエルは風属性魔法でオークを倒せるほどの実力者だけど、風以外の属性魔法はほとんど使ったことがないらしい。もし風属性魔法に耐性のある敵に襲われたらどうするんだって話しですよ。


 彼女はたったひとりでこの魔法学園を目指していたけど、無事に来られたのはラッキーだったと思った方が良い。



「みんな自分の得意属性は分かってるみたいなので、次はどんなことがしたいかを聞いて良いかな? 俺がみんなにおススメの新魔法を選んであげる。それぞれが使いたい新魔法をもう決めてるなら、それも教えてね」


「ユーマ先生。私は火属性魔法を使いたいです!」


 いきなり難しいのが来たな。


「さっきも言ったけど、エルフは火属性の魔力を放出しにくい。リエルだってそれは分かってるよね?」 


「だからこそです。私はハーフエルフなので、純粋なエルフ族ほど火属性魔法が苦手ってわけじゃありません。実際、初級魔法なら火属性魔法を使えます。火属性が弱点の魔物がエルフの里に攻めて来た時、私が戦力になりたいんです」


 なるほど。リエルなりに考えてのことなんだ。


「そーゆーことなら分かりました。新魔法には火属性と風属性を同時に使う錬成魔法があります。ただの火属性魔法を使うより、ずっと強力な魔法。リエルにはまず、これを使えるようになってもいます」


「わ、わかりました! 頑張ります!!」


「私は身体強化魔法が良いにゃ」


「ニーナは火属性と風属性だったら、どっちが得意?」


「んー。どちらかと言うと火かにゃ」


「だったら攻撃系の身体強化魔法がおススメだね」


「そうなの? ちなみに風属性だったら、どうなるにゃ?」


「風属性ならスピード上昇系の身体強化魔法になる。土属性に適性があれば、防御系がおススメ」


 少し悩んだ様子のニーナ。


「……できれば私、火と風の両方を使えるようになりたいにゃ」


「問題はないけど、身体強化系を2つ入れるなら遠距離攻撃系の魔法は減らした方が良いかな。それでも良い?」


「もともと私は近距離戦闘が得意な魔法拳闘士だから、遠距離系はなしで良いにゃ」


「りょーかい!」


 ニーナは身体強化魔法2つね。


 だったらそれらと相性の良い体力持続回復魔法も覚えてもらおう。



「僕は支援系の魔法が使いたいです。実は光属性の魔力を放出できます」


「光属性はレアだね。支援系って言うと、回復よりはバフとかデバフとか?」


「うん。そうです」


「生活魔法か、戦闘向きか。どっちが良い?」


「いくつ覚えられますか?」


「新魔法は最大で5個ぐらいにしておくべきかな」


「では、冒険でも使える生活魔法2。戦闘向きを3でお願いします。もし僕がもっと使えそうだってユーマ先生が判断してくれたら、生活魔法の数を増やす感じで」


「おっけー」


 これでフリストも方向性が決定した。


 後はアルメリアか。



「私も光属性が使えます。回復系に全振りします」


「ヒーラー志望だね」


 パーティーを組む場合、ひとりは入れておきたい重要職。


 俺はヒーラーが最強なら、そのパーティーは無敵になれるって思ってる派だ。


 まさかレアな光属性魔力の使い手がクラスにふたりもいるとは思わなかった。編入生だから、特色のある生徒を優先して合格させたりしたのかな?


 まぁ、今はそれを考えなくてもいいか。


 俺はアルメリアの先生として、彼女の願いを叶えてあげよう。


「まずは今ある回復魔法より高効率で回復量も大きい魔法。それから発動者の周囲いる仲間に体力継続回復の効果を付与する魔法を覚えようか」


「できれば、手足の欠損などが治る再生魔法も……」


「えーっと。それには聖女クラスの魔力量がいるんだけど──って、だから君は魔力量の増強がしたいって言ってたの?」


「そうです」


 聖女級の魔力まで強化してからの魔法修得か。


 めっちゃ大変だぞ。

 アルメリアが一番の問題になりそう。


 でも、こんな可愛い子が夕飯作ってくれると約束したんだから、俺としては頑張るしかないよな。


「わかった。それじゃ、魔力増強の訓練をしながら進めていこうか」


「ありがとうございます。ユーマ先生、よろしくお願いしますね」

 

 はーい。


 その代わり、美味しいご飯お願いしますね!

 

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