第19話 神にも比肩する力
俺はどのステータスを上げるべきか悩んでいた。
「物理防御のステータスツリーを解放してみたけど、こっちを上げるのはやっぱり違う気がするな」
やはりゲームで強いのは極振り、つまりどれかひとつのステータスにだけポイントを割り振るやり方だ。
俺の場合、スキル【特許権】に極振りした。100個も新たな魔法を創ったので、とりあえず現時点ではカンストしたものとみなしでも良いだろう。
だから次にあげるべきものを考えている。
まず大事なのはこの世界で死なないこと。俺的にはそれが一番重要。となると死なないように防御力を上げるか、スピードを上げて回避型にするか。
方法はいくつかあるけど、出来ればそのステータスも極振りにしておきたい。色々とバランスが良く上げておいた方が、しぶとく生き残る器用貧乏タイプになれる。でもその場合、攻撃力が弱くなってしまう。
可能なら死なないようなステータスをあげることで、それが攻撃力にもつながるようになっているのが最高だ。例えばスピードを極限まで上げることで、敵の攻撃は全て回避して、こちらは敵が1回攻撃してくるまでに100回攻撃して敵を倒す──など。
俺は戦闘職が魔法使いだから、上げるのであれば魔法系のステータスが良い。
魔法攻撃力にするか、発動速度か。魔力回復速度なんてのもありだな。どれだけ魔力を使っても一瞬で回復するとかになれば強いかもしれない。
「どうしよっかなー」
とても悩ましいが、こうしてステータスポイントの割り振りを考えているのも俺にとってはすごく楽しい時間。
当然俺は魔法攻撃力と魔法防御力のステータスツリーも解放している。
様々なステータスが表記された樹形図を眺めながら、あれやこれやと考えを巡らせていると、アイリスが話しかけてきた。
『とても楽しそうですね、祐真様。もしよろしければ、私に色々とアドバイスさせていただけませんか?』
特許化するための魔法詠唱を考える時も、俺が正しい質問をすれば彼女はヒントをくれた。答えそのものを教えてはくれないが、俺をサポートするための存在として役割を果たしたいんだろうな。
「是非お願いします! ステータスのどれかひとつだけを上げて、攻撃も防御もできるようにするには、どうすれば良いですか?」
『はい。では僭越ながら私、祐真様専用ガイドラインであるアイリスが、ステータスの極振りで強くなるためのヒントをお伝えします。ズバリ、“魔法発動に絶対必要なモノを上げるべき” です!!』
「魔法発動で絶対に必要なモノ……。それって、魔力かな?」
ステータスツリーには魔力量を増やす項目もある。
魔法攻撃力のベースに近いところにあるステータス項目だ。
「魔力回復速度じゃなくて、魔力量を増やすべきってことか」
『いくら回復速度が早くても、魔力量が足りなければ祐真様が権利化された各属性の最上級魔法を使うことができません』
「あっ! 確かにそうだね」
『またこの世界の魔力というのは、全て使い切ってから1日で全回復するというのがデフォルトなのです』
それは田中とダッサンが検証してたな。
魔力を使い切ったらどうなるのかって言うのは、魔法使いにとって絶対に把握すべき情報だ。とりあえずこの世界では魔力を使い切ると、マラソンを走った後のような倦怠感に襲われるということは把握していた。
『ここで重要となるのが、魔力は1日経過すれば絶対に全回復しているということ』
「つまり、魔力量が増えれば時間ごとの魔力回復量も増えるってことだね」
『その通りです。極論ですが、魔力量が膨大であれば、上位魔法を撃ち続けることだって可能になるでしょう』
「それは凄いけど……。防御力はどうしよう? 圧倒的攻撃力で敵に近づかれる前に倒す前提なら、もし接近されたらヤバくなるよね」
『魔力をあげることで防御力が向上する仕組みを創れば良いではありませんか』
アイリスは、さも当然のように言ってくる。
「仕組みを創るって、そんな神様みたいなことできないよ」
『いえ。祐真様ならそれが可能です。貴方には神にも比肩する力が。この世界の常識やルールを改変してしまうことが可能な力が備わっています』
常識やルールを変える……。
なんだそれ?
そんな力、俺には。
俺にあるのは
「もしかして、スキル【特許権】がそうなの?」
『祐真様は【特許権】を用いて、この世界に存在しなかった100の魔法を生み出しました。程度の大小はあるものの、世界のルールを書き換えているのです』
そうなんだ、意識してなかった。
「そんなことして女神様に怒られないかな?」
『スキル【特許権】も【ガイドライン】も。この世界にあるスキルは全て、女神様より上位の存在である大神様が創られたもの。大神様が創られたスキルを正規の方法で活用して得られた成果について、女神様が咎めることはないでしょう』
「てことはつまり……、創っちゃっても良いんだ。俺のステータスに最適化した、俺のためだけの魔法を」
『御明察です、祐真様』
俺は魔力量にステータスを極振りすればいい。そしてその魔力量に応じて防御力が上昇する魔法を創ってしまえば良いってこと。
そんなの最強すぎる!
最高じゃないか!!
よし! さっそくステータスポイントを魔力に割り振ろう!!
ステータスボードに表示されたNEXTの文字を押す。とりあえず2枚目に表示されるSPの現在の数値を確認しておこうと思ったんだ。
まだ1日しか経ってないから、そんなに貯まってないだろうけど……。
「ん?」
ちょっと数字がおかしくて、二度見する。
[ステータス2]
装備
・武器の装備なし
・高校の制服(効果なし)
ステータスポイント
残り:7,525.0
「な、ななせん、ごひゃくにじゅうご?」
何度見直しても、俺のステータスポイントは7,000を超えていた。
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