第2話 生配信

 限られた時間内になるべく多く作りたい。そんな思いで始めたが、この小さい猫でも普段2、3時間はかかっている。つまり夜まで配信してもいいとこ2体出来るかどうかだろう。間に休憩をはさんだなら1体がやっとかもしれない。


 まずは1体だけでも完成させられるよう一心不乱にカギ針を動かしていく。今日は調子よく進めることが出来て今のところ失敗もない。こうして無事に2時間ちょっとで1匹のシロネコが完成した。


 そう言えば視聴者が来ているかどうか確認していなかったことを想い出し、配信画面を確認したところ、そこに表示されている数字とコメントを見て僕は目を疑った。


 視聴者数は4,5人来てくれたら十分だと思っていたものがなんと100人を超えていた。そして多くのコメントが貰えており、内容もおおむね好意的な物ばかりだった。


「こんなに見てくれる人がいるなんて!

 これじゃやる気が出るに決まってる。

 よしもう1匹完成できるようがんばろう!」


 そしてまた2時間ほどかけて今度は茶色のネコを完成させた。この時にも沢山の応援コメントが書き込まれ僕は心地よい疲労感と満足感を得ていたのだが、それよりも視聴者数が500人を超えていることに驚いて声も出なくなっていた。


「まさかあみぐるみを作るだけの配信がこんなに見てもらえるなんてね。

 やってみないとわからないもんだなぁ。

 よし、じゃあ次は――」


 僕は今日の配信が終わりであるとコメントを書き込み、来週も同じ時間に配信することを予告してから配信画面を閉じた。その後、配信中に作った2匹のほかにもう1匹作りつつ、工程を簡素化して作るスピードを上げるよう工夫を始めた。その甲斐あって夕飯を挟んでもう1匹作ることが出来たので、あとは次回に向けて毎日練習するだけだ。



 そうこうしているうち、あっという間に一週間が過ぎてまた配信の日がやってきた。先週と同じように材料と機材をセットして準備完了だ。今週ずっと練習していたタイムアタック動画を一昨日アップしアップして、登録者数は目標の100人を少し超えておりすでに第一の目標はクリアしていた。


 なにが切っ掛けでこんなに見てもらえるようになったのかわからないが、気まぐれでアップしたゲーム動画や配信では視聴者数1とか再生数15回とかだったので雲泥の差だ。


「それではこれから配信をはじめます。

 今日も前回と同じようにネコを作っていきます」


 調子に乗ってマイクをオンにした効果かわからなけど、前回よりも早い時間で2匹のネコを完成させることができた。やっぱりデザインをシンプルにして工程を減らした成果が出ているようだ。


 僕は心地よい疲労感を感じながら夕飯前に少しだけ休憩をとるつもりでベッドへ寝ころんだ。

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