第2話

目を開けると、中華風のお気に入りのパジャマ。裸足でさらりとした赤い土の大地に立っていて。柵があり。

「お馬さん?」

馬が2頭。番だろうか。それとも、オスの方が早く走れるとか、メスの方が俊敏だとかあるのかな。目の前の馬に近づく。馬はキラキラしたものや見慣れないものには弱いというからそっと。合っているかどうかはわからない。茶色が濃くて、筋肉のつき方が立体的で苦手だけど、触れたいな。

触れた。

「うわあ!」

お馬さんに触れたの初めて!馬って、短い毛だけど気持ちいい。乗って、いや乗せていただきたいなあ!

「あ……」

男の子の声がした。声のした右へ顔を向けると。

干し草を運ぶ、部屋着姿の同じく裸足の同い年くらいの少年。

「いいね!馬って!初めて触ったよう!」

にっこりしながら心の中ではどうしよう、勝手にさわっちゃってる、どうしよう、引っ込みがつかないよう。

と、混乱中。

「それ、どっちも、おれの、馬……っ」

なんとか相手がもカチカチの動きで馬に触れる桜を指差しながら、だから、ちょっと考えてみてくれ、というように指を宙に固定する。

「あっ、ごめんね」

「馬、怖くないの?てか、後ろからだと蹴られて顎砕けるらしいから気をつけて」

「そうなんだ!たいへんだった、物知りだね、このお馬さん達、君のなんだ!君のものに勝手に触れたみたいでごめんね!」

あざとさなんて持っちゃいけない。真剣なのだ。出しちゃいけない。干し草を馬のための部屋のようなスパースに並べてきた赤い顔の少年は

「なまえは?」

「さくら!愛染桜です。愛に染める、桜は一文字!よろしくね!」

少年が愛、という言葉にビクッとし、

「よろしく、夢だけど。俺は相馬(そうま)。だから馬係なんだと思う」

「馬の、係?」

「……学校の委員会みたいなもんだよ、良ければ乗せてあげたいけどオレ本物の馬の扱いよくわかんないし、鞍もないから乗せてやれない。まあ、ぜんぶ夢だし」

「ああ!あのへんなアナウンス!」

相馬の馬の説明を無視して桜は同じ人がいたのかと夢の中フレンドリーに接する。

「でも感触は再現できるんだね!もしかして本物の馬、相馬くん触ったことある?このお馬さんたち、相馬くん自身だったりして。2頭いるね。夫婦かな?」

はしゃぐ桜。

相馬も確かめろとも言えないし赤くなったり、女の子相手に白くなったり、もともと日焼けしている身だったり。

「相馬くん、そういえば、」

ビクッ

まだ話さなきゃなのか。女の子と。

「何歳?わたし14」

「え?……ヒミツ」

きょとんとしてみせる、寝癖がちょとはねた桜。

「なんで?」

「ここは、楽園というか、仕事場というか。交流スペースだと思いたくねーの。だから、みんな一才違いでも萎縮しちゃうようなら教えないようにしてる」

相馬が答えづらそうだ。なんとか言葉の意を汲む。

「……、年齢を伏せていて、しかも何人かいる?」

「そう」

「そっか!じゃあ、相馬くんが第一号!初めてだよ!よろしくー」

夢の中なのに眠気で相手に軽く会釈なんかしている。本当は握手でもしそうなくらい馬にはテンション上がっている。相馬はちょっともう口をパクパクしている。

「今日だけ見る夢なのかな?他の人に会うの、楽しみ?かな!」

もう、相馬以外に目を向けている。相馬は複雑な心境だ

「他の人はどこ?どんな人がいるか少し怖いから良ければ相馬くん!案内して!」

「あ……」

女の子から頼まれ事。でも、

「そろそろ起きると思うぞ」


もしくは、夜は長いから、眠りが浅ければ何度か会う、だから、ほかのやつにも、


目が覚めた。現実の。まだ夜中の、いや、早朝5時?

なんだか、手のあたりが、茶色の短い毛がついているのが朝日で見えてまさか虫がたくさん?!と思い「わっ」とさけぶ。


「んー?」

毛?タランチュラでもいたのか?こわいけど、これは……。

あ!

ちがう、馬だ。相馬くんだ!

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