第4話 ○○と付き合えって父さんが言ってくるんだが……さすがに無理

「この悲しき念……! 勇夜に飛ばしてやる! 道連れだ……! カピバラブスと付き合えカピバラブスと付き合えカピバラブスと付き合え!」


 だが、ここまで言われたらさすがに聞き捨てならなかった。


「悪いな父さん。俺は恋愛には妥協しない男だ。絶対、俺のことを甘やかしてくれる色素薄い系天使女子をゲットしてみせるぜ……!」

「あ、おにい。ふふっ、色素薄い天使とか夢見すぎじゃん。日本人じゃまず無理だし、ヨーロッパ系の美人でもそうそういないよ?」

「アンタ、なんにも見えてないわ。恋は盲目って言うけど、始まる前から盲目じゃない」

「そうだぞ。諦めてブスを狙え、ブスはいいぞ。数も多いし、狙うライバルも少ない。だから数撃ちゃ当たるぞ?」


 さっきまで父さんをボコってたのに、みんな足並みを揃えてきやがった。

 ドア枠に寄り掛かり、キメ顔の俺に陽菜美も母さんも呆れた視線を送り、父さんすら可哀想な物を見るような目だ。


「ほら、な? ブスでいいだろ。あいつら金もかからないし、美人と付き合うよりよっぽど気楽だぞ……そりゃ他人に見られるとブスが彼女なんて恥ずかしいかもしれないけど、すぐ慣れるって、な……? いいだろ?」


 ひっ!? 闇に引き込まれる!


「お、俺! この後、大学の飲み会があるから! それじゃ!」


 虚ろな目をした父さんがよろよろと手を伸ばしてきたところで、俺は逃げるように自宅を飛び出した。

 通路を抜け、エレベーターで一階フロアへ降りると、俺は苦笑した。


「父さん、全然説得力ねぇよ……ブスがいいとか言って、自分はそこそこ美人な嫁もらってるし……そうじゃないと陽菜美が可愛く育たないだろうから」


 身内贔屓してるわけじゃないが、あいつはかなり可愛い。実際、高校で何度か告白されているらしいから間違いないだろう。ややつり目がちで気が強そうな顔なのに中学生くらいのあどけなさも残している。しかも家では赤ジャージでずぼらで隙がある一面もあって気軽な印象だ。可愛いのにずぼらで隙があるとか、妹じゃなければなかなか俺好みの女の子だった。


 だからだろうか。ブスな彼女を連れて帰ったら負けな気がした。俺は妹に性的興奮をする奴ではないが、俺が作った格言に『ブスは妹より萎える』というものがある。あんまりブスな女はダメだと言うと俺自身が嫌なヤツだと思われそうだが、彼氏の妹が可愛いとか彼女だって自分に自信がなくなって嫌な気持ちにさせるかもしれない。


 いや、ブスでなくても可愛い系なら妹に勝てる女なんてそうはいないだろう。だとすれば狙うなら美人、それも俺好みのおっとりお姉ちゃんタイプだ。


 よし! 標的ターゲットは定まった! 俺ならできる、できるぞ……ん?


 そう決心しながらマンションを出ると、エントランスの前に停車した白いバンが目に留まる。

 大きな段ボールを何箱も運んでいる。大学生風の男たちだ。

 新生活が始まる四月から二カ月が過ぎた六月の今日この頃。引っ越しにしては遅めの時期だ。引っ越し業者に見えないから友達に手伝ってもらってるんだろうか?


「あ……っ!」


 細めの体格の男がつまずいてレジ袋を落とした。金属の筒状の物がガチャガチャと音を立てる。


 ガスボンベ……? なんでこんなに? パーティでもする気か?


 二個のレジ袋にぎっしり詰まったガスボンベを見て俺がそんなことを思っていると、車から段ボールを持った男が出てきた。


「気をつけろよ」

「はい、すみません先輩。でもこんなにいるんですかね」

「あまったらお前の部屋に置けばいいだろ。一人暮らしなのに無駄に広いし」

「えぇ、まぁ一部屋余ってるから物置に使ってますが……」


 やけに暗い顔をしていた。

 そんなに思いつめた顔してどうしたんだ? ……いや、そんなことより飲み会だ、飲み会。

 男の様子がちょっと気になったが、俺は小さく頭を振ると飲み会の会場に向かった。



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