第11話 兄に靴下を脱がせる系妹

「お兄ちゃん、ちょっとお邪魔するね!」


「はいはい、どうした?」


「あ、勉強中だった? 気にしないで平気だからね」


「え、そう?」


 ある夕食後。妹の夏美が俺の部屋にやって来た。いつも登下校時に使っている鞄と制服姿。これらか登校でもするかのような格好だった。


 夏美は勉強している俺の部屋に入ってくると、何かを探そうように部屋をきょろきょろとしていた。それから、目当ての物を見つけたのか顔をほころばせて、俺の通学鞄の方に向かっていった。


 何をするのだろうか。そう思っていると夏美は慣れた手つきで鞄を開けた。


「……」


「♪~~。よっし」


 夏美は鼻歌交じりに俺の鞄の中から使用済みの体育着を取り出すと、それを自分の鞄の中にしまった。


 その代わりに、取り出した自分の体操着を俺の鞄の中に入れていた。きっと、それも使用済みなのだろう。夏美は追加で体育で使用したくるぶしソックスを一番上に置いてファスナーを閉めると、こちらにちらりと視線を向けた。


 それからにこりと笑うと、俺のすぐ近くまで寄ってきた。そして、夏美は膝をついてこちらに視線を向けると、俺の足を軽く叩いた。


 じっと見てくるので俺がゆっくり足を上げると、夏美は俺の靴下を脱がしてそれを自分の鞄の中に入れた。もちろん、両足分である。


「よっし。それじゃあ、お兄ちゃんありがとうね!」


「逃がすかこの野郎。説教タイムだ、座りやがれ」


「説教? え、そういうプレイなのかな?」


「違うわ、いいから座れ」


 初めに出てくる言葉がなぜそんな言葉なのか。いくらそんなことを考えても、もうこの妹の思考回路はどうすることもできないのだろう。


 時には、諦めることも必要だ。


「べ、ベッドに座ってもいい?」


「……好きにしてくれ」


 夏美は俺の了承を得ると、嬉しそうにベッドに腰を下ろした。ベッドに座るだけでそれだけうっとりとした顔をしてくれるのなら、安いものですよ。


 あとでタオル用意しとかないとな。


「なんで俺が夏美を呼び止めたのか分かるな? なんできょとんとした顔ができるんだ」


 俺の言葉を受けて、夏美は不思議そうに首を傾けていた。どうやら、本気で分からないみたいで、そんな顔をされるとこちらが困ってしまう。


「さっきまでの行動を考え直してみてくれ。おのずと答えは出るはずだ」


「……あ、ごめん。そうだよね」


 夏美は先程までの自分の行動を振り返ると、すぐに自分の過ちに気づいたように謝罪をした。今回は早く自分がしたことの過ちに気づいたらしい。


 そうだよ、夏美はちゃんと考えれば分かる子なのだ。


 兄妹で使用済みの体操着を交換して、それをおかずにすることがおかしいということに、ようやく気付いてくれたらしい。


 確かに、気づくまでに時間がかかった。でも、気づけたのなら遅くても良いではないか。


「分かってくれたか?」


「うん。いいよ。お兄ちゃん」


 夏美はそう言うと、ベッドに座りながら俺の方にそっと脚を伸ばしてきた。羞恥の感情で顔を赤くしながら、こちらに上目遣いの瞳を向けてきている。


「……何がだ?」


「え、私がスクールソックスを履いたまま出ていこうとしたから、説教しようとしたんでしょ? お兄ちゃん、やっぱり脚フェチだったんだね。私が毎日履いてるスクールソックスでするのが好きなんだぁ。あ、どうしよ、お兄ちゃんが私のスクールソックスでしてるとこ考えたら、お股がぐちゅぐちゅにーー」


「違うわ! それとやっぱりってなんだ、やっぱりって!」


「え、脚フェチだよね?」


「なぜそこには確信を持っているんだよ、本当に俺のことなんだと思ってるんだよ」


 驚くような夏美の顔を見て、少しだけ泣きたくなってきた。だってそうだろう? 兄妹にそんな性癖を持っていると疑いをかけられるって、一体なんだよ。


「やっぱり、否定しないじゃん」


「だから、違うっての。別に、夏美の脚とか靴下見てもなんとも思わないからな」


「ふーん、そこまで言うんだ」


「な、なんだよ?」


 夏美は俺の言葉を面白く思わなかったのか、俺の言葉を聞いて少し挑戦的な視線を向けてきた。俺がその視線から逃げないでいると、夏美はなんともないような口調で言葉を続けた。


「じゃあ、脱がしてみてよ」


「は?」


「私の靴下、脱がしてみて」


 そう言うと、夏美は足の先をぴこぴこと動かしてこちらの視線を誘導した。思わず向けてしまった目を引き戻して、夏美の方に向ける。


 すると、夏美は何かを察したような笑みを浮かべていた。


「な、なんでだよ?」


「私は脱がしたよ、お兄ちゃんの靴下。私はなんとも思わなかったけど、脚フェチのお兄ちゃんには難しいかな?」


 楽しそうに俺を煽るような口調。できるわけがないと挑発するような視線を向けられて、兄たる俺が黙っているわけにはいかない。


 兄は妹の靴下を脱がせても何も思わない。それを証明してやる!


「や、やってやんよ!」


 俺はそう言うと、ベッドに座る夏美の靴下を脱がすために床に腰を下ろした。


 ついっと俺の前に出された夏美の脚に触れて、俺は夏美のスクールソックスを脱がしにかかった。


「~~っ。あっ」


「へ、変な声漏らすなよ!」


「~~っん」

 俺が脚に触れた手を移動させると、夏美は性感帯でも触られたかのような嬌声染みた声を上げた。


 夏美の体が小さく跳ねて、それに合わせて俺の鼓動が跳ね上がる。


 細いのにしっかりと筋肉のついたふくらはぎ。膝からふくらはぎにかけての緩やかな曲線美は見るだけで人を虜にする。絹のような肌触りに筋肉による弾力を感じる肉感。それらを覆い隠している黒のコントラストが徐々に脱がされていき、そこには傷一つない艶めかしい肌が現れた。


 ほら、な、何ともなかっただろう。


 両足のスクールソックスを脱がし、俺は夏美の脚に触れていた。そこではっと気づいて、夏美の脚から手をどけた。


 大丈夫だ。ただ靴下を脱がしただけにしか見えていないはず。べつに、必要以上に触っていないはずだ。きっと、たぶん、そんな気がする。


「ど、どうだ? 問題なく脱がすことができたぞ」


 俺はなんともない風を装って、顔を上げて夏美の方に視線を向けた。


そこには、火照ったような真っ赤な顔をした夏美がいた。とろんと蕩けたような熱のある瞳は妙に艶めかしい。辱めを受けながらも、それを受け入れた少女。そんな背景を感じるような顔をしていた。


そして、そんな顔をしながらも俺をからかうために必死に顔を作って、余裕ぶっている夏美の顔がそこにあった。


「顔真っ赤。お兄ちゃんのえっち」


「なっ! そ、そんなことなーー」


 そんな夏美の顔を前に俺は言葉を失ってしまった。魅入っていたのかもしれない。


「はぁ、はぁ……っん」


「夏美?」


「えっと……ベッド、ごめんね?」


「ベッド? ごめん?」


「お兄ちゃんがいやらし手つきで触るから、お股が凄いぐちゅぐちゅ。凄い垂れてそう」


 なぜか満足げな顔で笑みを浮かべると、夏美はそのまま俺のベッドに倒れ込んでしまった。


 いよいよ事後みたいじゃねーか。ていうか、兄にそんな顔を見せるなよ。


 そんな疲れ果てたようにベッドに横になる夏美を見ても、投げ出されている脚を見ても、俺は何も思わなかった。


 当たり前だ、俺はお兄ちゃんだからな。妹のこんな姿を見ても、あんな艶めかしい脚を見ても、何も思わないのだ。


本当だぞ? ……本当ってことにしておいてくれないだろうか?


俺はやり場のない目に困り、そっと目を閉じたのだった。


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