第6.1話 僕と、私の、ひと夏の触れ合い 前編

 やあ、君か。

もしかして、この間少しだけお話した

ペリドット君の事が気になるのかい?

ならば今日は改めて会った時の話をしよう。

ちなみにこれからお話する事は

あおぞらきのみ本編第6話の裏側となる。

前回同様本編をここまで見てから

この先を見る事をオススメするよ。

それでは始めよう。


   * * * * * * *


 2011年某日。


 白部 求はいつものように

ネット上で熱心に情報収集をしていた。

すると、興味深い記事を見つけた。


「遠い所の貴族のようだが、画像に写る

この子供の目が……黄緑色に輝いている?」


 画像には両親と沢山のメイド達、そして

金髪で黄緑色をした瞳の少年が写っていた。

彼らはシュトロハイム家。

その地域では高貴な身分の家族のようだ。


「まさか、眼光症を持った子供が

ここにもいたとはな。何とかして

コンタクトを取れないものだろうか」


 求はシュトロハイム家のアドレスを調べ

メールを送る事にした。


「まずは挨拶ぐらいしておかないとね」


 初めまして。私は白部 求といいます。

見た所、家のご子息は黄緑色の瞳を

持っているようですね。

それも、まるで宝石のように美しく輝く。

私の身内にも、同じような症状を

抱えている人がいて、私はその症状を

研究するために科学者となりました。

写真も送りますので是非とも

この症状は彼だけの物では無いと

教えてあげてください。

白部 求


 それから数日後、返事が来た。


 メールありがとうございます。

あなたの所にもそのような方がいたとは。

しかもその症状の研究をしているとは

我々の所にはおりませんでした。

よろしければ近い内に是非とも来ていただき

当主のご子息たるペリドット殿と

お会いできれば光栄であります。

良き返事を待っています。

シュトロハイム家 当主代理


「当主殿はお忙しい方のようだな。

時間はなるべく多めに取りたいものだ」


 求は少しずつ旅行の支度を始めた。

シュトロハイム家とはしばらくの間

メールによるやり取りが続いた。


 7月3日。

出発前日。求は親友の翡翠に

メールを入れた。


 突然だが、一ケ月の間

遠方出張に行く事になった。

しばらくは君に会えなくなる。

だが引き続き、何かあった時は

こちらに伝えておくれ。


「翡翠は今、あの翔多と同居している

みたいなんだよな。まあ彼ならきっと

守ってくれるはずだから心配は無用か」


 要らぬ心配は捨て置いて

求は明日に備えて眠りについた。


   * * * * * * *


 7月4日。

出発の日。


 求は同僚の研究員数名と共に

ペリドットの住む所へ飛行機で向かった。

女性一人で、ましてや身体に傷を負っている

求1人だけではさすがに困難だからね。


・・・


 7月5日。


 日を跨いで現地に到着した求一行は

シュトロハイム家へとやって来たのである。

玄関には、家の当主と思われる人が

求一行を待っていた。


「お会いできて光栄です。さあこちらへ」

「手厚い歓迎、感謝するよ」


 求一行はシュトロハイム家の大広間へと

招待された。


「この方が、一族の未来を担う。

ペリドット・シュトロハイムです」


 当主に呼ばれると、大広間の階段から

あどけない表情の少年が降りてきた。

求の目の前に来ると、挨拶した。


「あなたが、白部 求さん?」

「いかにも。君がペリドット君だね。

その瞳、とても美しいよ」

「今日は出会えてとても嬉しいよ。

これから、その、よろしくね」

「一ヶ月程過ごす事になるけど

よろしく頼むよ、ペリドット君」


 これが、求とペリドットの出会いである。

お互い、少し緊張気味のようだ。

その後、食堂で歓迎会が開かれた。


「家のシェフが腕を振るいました。

どうぞお召し上がりください」


 求一行の前には、豪華な料理が並んだ。

普段から質素な食事が多かった求も

これにはさぞ驚いた事だろう。

豪華な料理を楽しみ、食後のデザートに

差し掛かると、求はこう言った。


「ふむ……このメロンのデザートが

なかなか良い味をしているではないか」

「実は僕、メロンが大好きで、よく

食事の時間に出してくれるんです」

「おお、それは嬉しいな。私も

お土産に持ち帰りたくなった」

「おかわりもあるからね」


 求は前髪の裏に笑顔を浮かべながらも

シュトロハイム家の料理を楽しんだ。

それから、求はペリドットの部屋へと

案内された。


「沢山の本と、競技用のサーベルが

沢山並んでいる。私の研究所でも

ここまで並んでいないよ」

「僕の毎日は勉強やフェンシングの稽古や

乗馬などをする事で、同じ歳の友達と

一緒に遊んだ事が無かったんだ」


 ペリドットの事情を聞いた求は提案した。


「そうだったのか。それなら私が

君の初めてのお友達になってあげよう」

「え?このお姉さんと?」

「お友達に歳は関係無いよ。これからは

君の事を沢山知りたいからね」

「あ……はいっ……分かりました……」

「改めて、私は白部 求。眼光症研究者」

「僕はペリドット・シュトロハイムです。

どうぞよろしく……」


 手を繋ぐ求とペリドット。

これから、二人は少しずつ

打ち解けて行く事になる。

求は眼光症の新たな秘密を得られるか。

ペリドットは新たな友達と仲良くなれるか。


 これは、二人の一ヶ月間の記録である。


 中編へ続く。

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