第4話 異変

「あっ…。」


 突然現れた拓弥君の姿に、私は驚きを禁じ得なかった。うっかり漏らしてしまった声は、私の驚愕を物語っていた。彼も私に気づき、目が合った瞬間、驚きを浮かべた。私は、彼が私を確信した瞬間、緊張が走り、どうしていいか分からなくなってしまった。


「真由か…?」 


 彼の声は、やわらかく友好的でありながら、私は彼との再会に動揺していた。頷くだけで、私は答えた。頭が真っ白になり、口からはまとまりのない言葉しか出てこなかった。話したいことが山ほどあったにもかかわらず、何も話せない自分に、私は失望した。心臓が高鳴り、鼓動が加速する中、彼の姿を見つめていた。


「その…と、突然で驚いたよ。元気…だったか?」


「うん…。拓弥君は?」


「俺も…。」


「……。」


 会話が途切れ、空気は重苦しく漂っていた。普段なら、そんな場合は退散することで気まずさを解消できるはずだが、今回は足が動かない。私たちはただ立ち尽くし、お互いを見つめることもできなかった。彼が早々に去ればいいのに、なぜかその場に残っていた。


「あのね…。」 


 私は勇気を振り絞り、声を発した。彼の昔から変わらぬ真っ直ぐな瞳が私を見つめていた。


「私、ずっと苦しんでた…。拓弥君に別れを告げられてから。」 


「そっか…。それは俺も同じだよ。」


「そうだよね。拓弥君は、ずっと私に裏切られたと思っているんだもんね。」


「えっ…。それってどういう意味…。」


「いいの。もう、終わった話だし、今更どうすることもできないよ。」


「真由…?」


「あーあ。どうして、神様はこうも残酷なことをするんだろう。私ね…今付き合っている人がいるんだ。」


「そう…なんだ。どんな人?」


「うん。男らしいけど、とても優しくて、包容力がある人…かな…。」


「へぇ…理想的な相手だな。」


「そうなのかな。拓弥君は?」


「あ…うん。俺もいるよ。」


「そうだったんだ…。どんな方かな?」


「うん。いつも自然体で飾らない人だね。」


「なにそれ?分かりにくい。」


「え!?そっか?んー。一緒にいて楽なんだ。安らげるっていうか…。」


「ふ~ん。」


「何だよ?」


「何よ?」


「あはは。」

「あはは。」


 3年ぶりに2人で並んで話し、そして笑った。あの頃の2人の思い出が再び蘇る。彼の顔も、声も、話し方も、全てが愛おしかった頃を…。長い間閉じ込めていた私の想いが、ついに解け始めた気がする。彼に対する恋心が、私の胸中を再び揺さぶり始めた。


 私と同じように、彼もまたこの再会で感じ取っているだろうか?もし彼が私に対して同じような想いを抱いてくれたら、その思いだけでも十分なのである。


「真由。俺さ…。」


ガタガタ…ガタガタ…。

ガタガタ…ガタガタ…。


「きゃあ!」

「うわぁ!地震?」


 彼の口から漏れた声は、微かに震えていた。その時、突然足元が激しく揺れ動き始めた。私たちは手すりにしがみつき、必死にバランスを取りながら、まるで生き物のように踊る地面を見つめていた。今までに経験したことのないような強烈な揺れが私たちを襲い、全身に激しい衝撃が走った。


 周囲の地面は、一方は隆起し、一方は陥没していた。私の手に握りしめた手すりも、グニャリと形を変え、あまりにも凄惨な揺れのエネルギーを感じさせた。まるで地球が自分たちを叩きつけるかのようだった。


 やがて、私たちの足元も地盤沈下して、2人とも地面に吸い込まれるように落下したのであった…。


―――― to be continued ――

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