第16話 反乱の計画を知る

 箱がゆっくりと開き、見知らぬ少し焼けた肌の男の顔が見える。


「我らの新女王・エリシア様。

 ようこそ、お待ちしておりました。」


 拍手喝采の中、エリシアは箱の中から起き上がる。


「へ?」


 そこは、半地下の大きな聖堂の祭壇の上らしかった。


 ただ、おかしいのは、なぜか大勢の人々

……貴族らしき人もいれば、明らかに貧しそうな民……などが皆そろって、エリシアに向かってひざまずき、頭を垂れていたことだった。


 まるで、本物の主君にするかのように……



(どういう状況??女王? 私が?

えっと、それからここはどこ??)



 「エリシア様。」


首謀者らしき男がエリシアに話しかける。



(おかえりなさい? 誰かと間違えているのかしら?)


状況が飲み込めず、呆然とする他なかった。




 半地下の聖堂に、薄っすらと光が差し込む中、男は叫び続けている。演説中のようだ。


「皆、よく聞け!

 この国の王族、王太子から我らの女王をお助けした!

 あの反乱で亡くなったと思われていた女王は生きておられた。

 しかし、女王は長く王太子に虐げられ、無理矢理、婚約者とさせられ、その果て、先日急に婚約破棄されたという。

 この国の下賤な王族が、我らの女王に手出しをするなど、豪語同断である!

 我々は、我々と女王を虐げし今の王族を許さない!」


 聞いている人達も大いに男の話に力強くうなずいている。



 「我々は、7年前に起きたルーベルティアの反乱後苦しんだ同士だ。

 あの反乱後、この国の王族は我々ルーベルティアの人間を虐げ続けている。ご存知の通り、もうルーベルティアはまともに大都市としての機能をしていない。 

 あの昔の栄えていたルーベルティアを強欲な王族から取り戻すのだ!! 



我らとルーベルティアの女王のために!」



『オーーゥ!』


―――拳を高く上げる人々。



(いや、本当にどういう状況よ、これは!?)




――――――――――――――

 集まった人々が去って行った後。


 ひっそりとした聖堂の中、首謀者たちが数人集まって、エリシアを囲んだ。


 「本当に、あの公女様なんだろうな」


「へい…確かめやした。」


「よもや、本当に生きていたとは……」




ボソボソとエリシアを見ながら、口々に言う。



「あ、あなた達は誰なの?

 何をするつもりで私を連れてきたのかしら?」



「……先程も言いましたが、ルーベルティアを取り戻すために、今ある王族に立ち向かう……そのために、エリシア女王、あなたが必要なのです。」



「私は…私は公女でもないですし、

なぜ全く無関係な私がルーベルティアとかいう滅んだ大都市のために立ち上がらなくてはならないのかが全くわからないわ。」




「「「まさか、覚えてらっしゃらないんですか?」」」


 首謀者たちが声を揃えて驚いている。

 あり得ないとか、本当に当人なのか、と。


「残念ね。これで人違いだということがわかったでしょう?

 早く、私を早く解放しなさい!」



「いや、あなた様には、エリシア公女であるという決定的な証拠がある。」

「それに、7年も前から計画していたと、我々の計画を知った者を、我々が素直に返すわけがない。」

「貴方様には、我々の聖なる戦いの代表者として、そして、平民たちの士気をあげるためにいてもらわなくてはならない。」


そう言い切って、大柄な男3人が呼ばれ、箱の中にエリシアは押し込められた。



(私が抵抗できないなんて……あれ?

この箱、魔法がかかっている??)


 道理で開かないと思った。


今、着せられている民俗衣装的なものも、エリシアの武術や魔法を防ぐものなんだろう。


 念入りだ。




 ここまでして、反乱を起こしたいのか……


彼らがわかっているのかは知らないが、王族に反乱を起こすということは、自身やその家族の命さえも落としかねない行動だ。


 王族に歯向かうことは死を意味している。

そんなことは、たとえ平民の子供であっても知っている事実だ。


 




 (そもそも、7年前のルーベルティアの反乱で殺されたはずの公女と、私はなぜ間違えられてるの?

 それにしても、私が公女だという決定的な証拠って何なの…………)




 



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