第9話 花子さんの配信 題『million city(仮)』

 タイトル場面は、なぜか世界地図。

 なんとなく、私たちはオーストラリアを押す。すると、『シドニー』『ブリスベン』『メルボルン』『アデレード』『パース』に分けられていたので、私たちは『メルボルン』を押した。


 タイトルは、『メリーさんの電話』。

 なるほど。世界各地のホラーを集めたってことか。



  ■


 ……これは、私が遭遇した、怖い話です。

 メルボルンに滞在してから少しして、ある日、電話がかかってきたんです。

 その電話をとると、女の子の声で、


『私、メリーさん。今、フリンダース・ストリート駅にいるの』

 私は驚きましたね。フリンダース・ストリート駅は、私の近所だったからです。ちなみにフリンダース・ストリート駅は、19世紀、オーストリアで最初の鉄道駅として開業された、歴史ある駅です。

 同時に、「あ、これが都市伝説で聞くメリーさんか」と思いました。このままだと、メリーさんが私のところに来るのかなって。

 ところがですね。二回目の電話がかかりました。


『私、メリーさん。今、シーライフ・メルボルン水族館にいるの』


 ここで来て、私はおや、と思いました。私がいる場所からちょっと遠くなってきたからです。

 ちなみにシーライフ・メルボルン水族館は、フリンダース・ストリート駅から西に行くとある水族館です。ヤラ川沿いにあって、世界最大のソルトウォータークロコダイルやペンギンたちが見られます。

 なので「方向違うよ」と、ショートメールで地図を送信しました。


 暫くしてまた電話がかかってきました。


『私、メリーさん。今、ドーナツバトルに巻き込まれているの』


 メルボルンではドーナツが熱い。きっと途中、パティシエのドーナツバトルに巻き込まれたのでしょう。私は「ゆっくりしていってね。あと、美味しかったら買ってきてくれる?」と、電子マネーと一緒にメッセージを送りました。


 暫くしてまた電話がかかってきました。


『私、メリーさん。今、ロイヤルアーケードにいるの』


 よしよし。いよいよメリーさんが来るな。

 ちなみにロイヤルアーケードは150年近い歴史を誇るショッピングアーケードで、メルボルン最古とも言われています。

 私はメリーさんが買ってくるだろうドーナツに合いそうなコーヒーを用意して、彼女が来るのを待ちましたとさ。


~メリーさんのはじめてのおつかい メルボルン編 おしまい~


 

「いやメルボルンの観光地案内じゃんこれ!」

 私は思わず叫んだ。

 ホラーないよ! ただのおつかいな上、メルボルンの観光地しか紹介してないよ!! ってかドーナツバトルってなに!?

 一方モデルに使われたメリーさんは、真面目な顔で柳田と話している。

「なるほど。四○八(仮)のワールドワイドってことね」

『S○itch版移植求める』

 意味がわからん。

「ってかなんで!? なんでメリーさん使った!? メルボルン関係あるの!?」

『いや、フォロワーのかしこまりこ様のリクエストだからこれ。あとメリーさんにホラー要素なくてただのいい人ってコメントが多かったから、これを機にホラー要素足そうかと』

「急にメタな話するのやめい!!」


 あといつものメリーさんだったよ!! いつものいいメリーさんだったよ!!


『ちなみにこんな感じなのが後600以上はある』

「よくこんなの延々と作ったな!!」


 まごうなきクソゲーだっ!!


ーーーー

 リクエストはかしこまりこ様の「メリーさんがメルボルン来てくれたら、すっごく嬉しいです〜」でした。

 実は来てなかった。

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