第25話 ジン 香の雫

 先述した通りジンの本場はイギリスで、現代でも代表的なジンはイギリスのブランドばかりだ。

 先述したタンカレーの他、ビーフィーター、ヘンドリックス、ゴードンズなど、いろいろある。


 そうした中でも、私がぜひ使ってみたいと思っていたのが「ボンベイ・サファイア」。サファイア色のグラスで作られたボトルがきれいなブランドだ。

 蒸留の際にボタニカルを原液に漬けるのではなく、ボタニカルを入れたカゴに蒸留した蒸気を通すことで香りをつける、薫り高い一品として知られている。

 学生のころ、青いボトルに一目ぼれして購入し、頑張って3か月かけて飲んだことがある。ボトルは適当な花を摘んで生ける花瓶に使っていたのだが、引っ越しの際に失くしてしまった。


 ボンベイを使いたかったのだが、値段は200mlで935円と結構高い。

 2つも買うのはちょっともったいないので、結局あきらめて、もっと手を出しやすい物を探すことにした。

 酒屋の棚を見回すと、800円台で300mlの物が一つ見つかった。

 養命酒造が作る「香の雫」。

 11種類のボタニカルを用いており、その中でも香木の黒文字クロモジを使っていることを売りにしている。

 クロモジは芳香のある精油を含んでおり、枝葉を漬けこんだ薬酒が胃の健康に効果がある。養命酒らしいチョイスだ。


 実は日本でもジンの生産は盛んで、日本独自の材料をボタニカルに使ったジンを各メーカーが製造している。

 こうしたメーカーの中には日本酒や焼酎の酒造があり、自分たちの酒を風味を残しながら蒸留し、そこにボタニカルの香りをつけてジンにする手法をとっているらしい。

 コロナ禍でクラフトビールが余るようになったので、これを蒸留してジンを作るメーカーも出ているとか(ビールと違ってジンは長持ちするからね)。

 元の酒の風味を残しつつジンを作る方法は、かなり高度な技術を要するやり方らしく、世界中から注目されているという。


 もっと安い物でウィルキンソンが出しているジンもあったが、主にカクテルのベースとして使う想定らしい。

 ちょっと個性がないかもと思ったので、最終的に香の雫を選択した。


 梅と氷砂糖を準備して、さて酒を入れるべと蓋を開けてみると、真っ先に香木らしい強い香りが鼻に届く。結構個性が強い。

 味そのものはジンらしいが、香りの主張が激しい。好き嫌いが分かれるかもしれない。

 ジンで梅酒を作る場合、やはりブランドごとのボタニカルの香りが梅と合うかどうかで、おいしいか否かが変わってくるだろう。

 癖がないとは言えども香りをがっしりとつけているのが特徴の酒である以上、梅の風味と調和できるタイプのブランドであるかが重要になってくる。

 香の雫での場合、香木のような香りがどのように作用するかが注目ポイントになるだろう。

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