第4話 氷砂糖 ~梅酒の基礎材料~

 梅酒を作る上で欠かせないもう一つの要素が「糖」だ。基本的に、梅酒は氷砂糖を使って作るのが一般的だが、これにもちゃんと理由がある。

 普通の砂糖を使えば、氷砂糖を使う場合よりも早く溶ける。だが、そうなると浸透圧で梅から水分が急激に浸出してシワシワになる。

 使うのが塩か砂糖かという違いがあるが、原理的には梅干しを漬ける場合と同じだ。

 シワシワになるだけならいいのだが、水だけが早く抜けてしまうと、梅酒として利用したい梅の成分が実の中に残ったままになり、なかなか外に出てこなくなる。

 水分と一緒にゆっくりと溶け出してもらわなくては梅酒にならない。


 また、砂糖が先に溶けて酒の比重が重くなると、梅が浮いてしまってきれいに浸からなくなってしまう。

 浮いて上の部分が空気に触れると、空気中の微生物にさらされてカビが生えたり傷んだりする可能性が出てくる。

 氷砂糖はゆっくり溶けるので酒の比重は徐々に上がり、梅の中の水分との交代が緩やかに進む。

 梅は沈んだまま内部まで酒に浸かった状態になりつつ、エキスを外へゆっくりと放出していくことが出来るというわけだ。

 伝統的に続けられてきた手法というのは、ちゃんとした科学的な裏付けがあるという良い例だ。

 既製品の梅酒では、黒糖やはちみつを使った物もあるが、ああしたタイプの梅酒を素人が上手に作るのは難しいのかもしれない。

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