第10話 先制攻撃部隊招集

「ワガハイは建御雷神(たけみかづちのかみ)である! 今回は少数精鋭部隊での作戦となる!」


 校庭にあつまった生徒全員に建御雷神(たけみかづちのかみ)の声が響く。

 少数精鋭とはどういうことだろう?


「地の利にとぼしくレベルを30以上の者と限定する! 我々の自衛軍部隊でもその数は希少! 諸君の中でもごく一部の生徒に限られる!」


 レベル30か……。

 俺が知ってるのはミコトぐらいだ。

 

「今回は非常に危険な作戦となる! 先制攻撃部隊としての任を全うしてほしい! では、対象者を読み上げる!」


 先制攻撃部隊。

 過去、この部隊の帰還率は1割以下とも聞いている……。

 今の俺はリストリクトでレベル1になっている。

 まず選抜されることは無いので安心だ。


 けど、これってレベルを隠して作戦から逃れたってことじゃ?

 何か罰則とかあるんだろうか?

 それに第一……。


(バレたら全員から非難されるだろうな……)


 けど、レベル1のハズレスキルだと思われている今でも馬鹿にされているし、かわらないか……。


「まずはSクラス! 花華(はなが)ミコト!」

「はい!」


 ミコトは堂々と一歩前に出ると自信ありげな表情だ。

 危険な任務もミコトにかかればチャンスでしか無いんだろう。


「次にAクラス! 猿田(さるた)正彦(ただひこ)!」

「おう!」


 猿田の奴も堂々としている。

 つーか、あいつレベル30こえたのか。

 

「そして、最後に! 月詠(つきよみ)ミキ!」


 え? なんでミキが。

 ミキは返事もなくたたずんでいる。

 泣きそうな顔をしている。


「月詠(つきよみ)ミキ!」

「は、はい!」


 ミキは力いっぱい返事をして前に出た。

 足が震えている。


「以上、レベル30をこえる者は自衛軍ヘリにただちに乗り込め!」


 ミキの表情はかたまり足が震えている。

 あいつは、まじめだからどんな危険な事であろうと決められた事は守るだろう。

 俺はミキの事を小さい頃から知ってるから今、どれだけ怖がっているかもわかる……。


「待って下さい!」


 思わず叫んだ。

 建御雷神(たけみかづちのかみ)将軍が足を止めた。


「なんだ!?」

「俺も行きます!」


 全員が静まり返った。

 まるで時がとまったかのような時間がすぎる。


 次の瞬間、誰とも言えない笑い声で全生徒が爆笑した。

 ミキとミコト、猿田の3人は驚いて俺の方を見ている。


「おいおい、レベル1じゃあ盾にもならんだろ」

「アイツ、最悪スキルの最弱野郎じゃないか」

「ふざけるなよ! 俺達は真剣にやってるのにアイツ何考えてるんだ」

「ほら、あいつ、ミコト様に近づいてた奴よね。まさか一緒に行動したいから戦う気も無いのに志願したのかしら」


 笑いにまじって俺を批判する声が次々と襲ってきた。


「レベル30以上の者でなくてはならん! お主には資格が無し! だが、心意気だけは買っておこう!」


 建御雷神(たけみかづちのかみ)将軍は、やさしくさとしてきた。


「見てください!」


 俺はリリースでレベルを調整してステータスを開示した。


「うぬ! お主、レベル35もあったのか!」


 建御雷神(たけみかづちのかみ)将軍は驚いている。


「俺も行きます!」

「よし!」


 俺はミキ、ミコト、猿田に追いつき軍用ヘリへ向かった。

 他の生徒は一気に静まり返り、ぼうぜんと俺の方を見ている。

 

「ヒサシくん……」


 ミキは心配そうに俺に声をかけてきた。


「大丈夫だ。俺にまかせておけ」


 ミキは少し安心してくれたのか微笑んだ。

 目に少し涙をためている。

 よっぽど怖かったんだろう。


「アンタ、やっぱり力を隠していたのね。まあ、なんとなくわかってたけどね」


 ミコトは「フンッ」と言った感じで話かけてきた。


 実はまだ力隠してるんだけど、さすがに全開放は無理だし、レベル40でミコトに並ぶのも何となく悪い気がしたから35にしておいた。


 猿田も驚いたように話しかけてきた。


「まさか、レベル35だったとはな。俺はあれから必死に特訓とダンジョンでのレベルあげを繰り返しレベル30になった」


 コイツはコイツで努力してるんだな。

 レベル1のまま今回の任務から逃げようと思ってた俺よりもよっぽど正しい奴なのかもしれない。


 軍用ヘリへ乗り込むと音もなく浮上し相当なスピードで進みだした。

 女性の声でアナウンスが流れる。


「今回の目標はGCR測定により討伐推奨レベル30と判明しています。なお、他の部隊は官邸の防衛、目標進路防衛戦にわりふられます。目標到着まで10分です」


「まあ、あれだな。未知の魔物だから俺達は捨て駒みたいなもんだな」


 猿田がボヤいた。


「なんでそんな事わかるんだよ」


 いきなり捨て駒だなんて、さすがに軍の作戦とは言え無いだろう。


「GCR測定って言ってただろ?」

「それが何か?」

「このGCR測定というのは未知の魔物のレベルを推定するのに使う測定器だ。精度について怪しいものらしいからな」


 猿田は批判的な口調で言った。


「関係ないわよ。むしろアタシにとっては未知の魔物が強ければ強いほど武勲になるんだし、ありがたい話だわ」


 ミコトの一言で猿田はだまってしまった。

 気まずさを感じる間もなく軍用ヘリは目的に到着した。


 俺達は海上の巨大な軍艦の甲板に降り立った。

 そして息をつく間もなく対象が出現した。

 

 巨大な1つ目の大蛇。

 海から顔をのぞかせてこちらを見下ろしている。

 10階建てのビルほどの大きさもあるだろうか。


――――――――――――――――――――


【クラーケンクラス】


 ・討伐推奨レベル:30


 ・スキル:吸収 


――――――――――――――――――――


 巨大な1つ目の黒い眼球が、ギロリと俺達の方へ向けられた。

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