第6話 神殿に来たのに、恋愛相談始まる⁉︎

 ミークの言葉にオズワルドは慌てて手を振った。


「ミーク慌て過ぎだ。美麗様はこの国の事、これからの聖女としての事何も分からないのに、先走り過ぎるのは良くない」


 ごもっともです。恋愛はしたいけど、召喚された最大の理由を排除してからゆっくり恋愛するでもいい気がする。


 異世界に来たんだもの。ケモミミとか、エルフとかにも会ってみたいし。



 どれだけの種族がいるか分からないけど。


 ミークは一人立ち上がり何かを決意するかのように、握り拳を作った。


「殿下、考えが甘いですぞ。元の世界を恋しがってからでは遅いのです。こちらの世界に好きな人が居る、というだけで、世界が色付き始めるのですぞ」


 ミーク、何を本気で語り出すのよ。初めて会った時の印象とだいぶ変わってるんですけど、そんなに恋愛について熱く語る人だとは思わなかったわ。


 ていうか、オズワルドが真剣にミークに耳を傾けている。


 私自身の容姿は特別美人というわけじゃないし。


 突然「恋愛しよう」って頭になるほど、恋愛脳でもない。


 オズワルドが腕組みをして考え始める。


「確かに、元の世界に戻れないとなって、悲しくて聖女としての任務が遂行できなくなってからじゃ困るし。折角この世界に召喚されたのなら、こちらでの楽しい思い出を作ってもらいたい気もするし」


「流石殿下は、人の気持ちに寄り添うのがうまいですぞ!!」


 私の感情を無視して話し始める二人。


「オレには婚約者が居るし、でも彼女の立場の地盤を今後ちゃんとしてもあげたいし。そうだ、美麗様後で、オレのとびっきり可愛い婚約者を紹介するから楽しみにしていてください」


「はい」


 同性の人に会えるのは嬉しい。ララが教えてくれるけど、彼女は「メイド」としての立場を超えられない、てか王子様の婚約者って言ったら悪役令嬢とか出てくるのかしら。ワクワクしてきたわ。


 ふと、ミュゼァに視線を移すと、頭を抑えていた。


「3人とも盛り上がっているのはいいが、そろそろ話を進めた方がいいんじゃないか」


 私はミュゼァの言葉に、私自身も楽しんでいるようにみられたのが、納得いかなかった。


「2人は私を励まそうとしてくれたんですよ」


 ミークが私の言葉に感動したように、目頭を抑える。


「美麗様はお優しい」


 オズワルドは、私とミュゼァを見つめてニヤニヤしていた。


 ミュゼァはオズワルドを睨みつける。


「一刻を争うのを忘れていないだろう。聖女召喚で少しは世界の秩序が安定したのを感じているが、彼女にはこの国を知ってもらって、聖女として呼び出してしまったからには、やってもらわなければならない事がある。反面こちらが守るべき盟約も生まれてくるのを、話すんじゃなかったのか」


「………そうだったっけ?」


 オズワルドがきょとんとしている。ミークは私とミュゼァの顔を見比べて何やら楽しそうだ。


「ミュゼァのが美麗様を大層心配しておるのじゃな。流石稀代の魔術師じゃな」


 ミュゼァが視線だけでミークを黙らせる。


「呑気に雑談するよりも先にやることがあるだろうと、言いたいだけだ」


 心配、してくれている気がして私は嬉しくなった。出会ったばっかりで何も分からないけど、口が悪いだけで思いやりのある人なのかもしれない。


「包み隠さず、教えてください。私がこの世界でしていかなきゃ行けないこと、呼ばれた理由を」


オズワルドは、咳払いを一つした。


「すまない。考えなければならないことが多すぎて少し暴走してしまった。聖女美麗、君をこの世界に呼んだのは、先代の聖女の遺言があったからなんだ」


「チッ」


 ミュゼァの舌打ち。さっきまでの優しそうな雰囲気から一転、ミークが立ち上がりミュゼァの頭を叩く。


「先代聖女様と聞くだけで舌打ちするのはやめなさい。美麗様も驚いているじゃろう」


「ごめんね、こいつの母親が先代聖女様だったから色々思うところがあるみたくて」


「そうなんですか!?!?!」


 私の驚きに、ミュゼァが眉間に皺を寄せている。


「詳しいことは、後で話す」


 踏み込んでくるなと言われているみたいで、私はオズワルドに向き直ると、苦笑いをしていた。


「聖女美麗、この世界は今邪気が活発になっていてそれを払えるのは聖女と、四国を守る聖獣だけなんだ」

 

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