第5話 豚暴君

 関羽と妻子が張遼の統治する村に滞在してから七日後。


 関羽はある覚悟を決めて張遼に相談した。


 まず、神の天啓を関平から受けた事を。


 すると、張遼は。


「関羽兄上。妻子の事は、それがしが責任を持つ。だから、一刻も早く曹操殿にお仕え下さい」


「頼むぞ張遼」









 こうして、安心した関羽は曹操の元に向かい、五年の月日が流れた。




 張遼は丁原に仕えていたが、呂布が董卓とうたくの使者の甘言に乗り、金銀財宝と中華一の名馬、赤兎馬せきとばと引き換えに丁原を殺害して、董卓に仕えると張遼も呂布の配下として董卓に仕えた。



 やがて、曹操が袁紹えんしょうを総大将とする董卓討伐連合軍を組織すると、やがて戦端が開いて董卓軍将軍、華雄かゆうが曹操軍家臣、関羽に討たれ、本拠地を洛陽らくようから長安ちょうあんに移ると、関羽の妻と関平は見せしめとして歳は五十代半ば、豚の様な腹だが、筋肉隆々の極悪人面の董卓の面前に縄を身体に縛られながら引きずり出された。


 その際、関羽の妻は。


「お前が中華一番の極悪人、董卓か! 私は関羽様の妻として命乞いなどせぬ! さっさと殺せ!」


「この董卓を侮辱するとは許せぬ鳥ぞ! 殺してくれる!」


 董卓自ら七星剣しちせいけんという宝剣で腹を抉り殺した。


「残るは関羽の小鳥よ! そなたはこの母鳥と同じ死に方をしたいか? それとも命乞いをするか?」


 関平は名を中華中に挙げる機会だと思い命懸けの賭けに出た。


「見た目でしか力を判断出来ぬ豚暴君! もし、俺が中華の統治に役立つならば、重き地位に挙げてみやがれ!」


「何だと!」


 関平の首に七星剣を当ててみるが動じなかった。


「くっはっは。この小鳥は、いや関平は中々面白い。儂を豚暴君と侮辱し、命を失う覚悟もある。良かろう。何か良き策があるのか? もし、あれば助命し、儂の重臣として取り立てよう」


「ならば、二年、時を寄越せ! 二年で俺の言うとおりやれば農作物の収穫を三倍にしてやる」


「三倍だと、笑わせるな長安の農作物は何万石だと思っている?」


「約二十万石だ。それを最低六十万石に出来る」


「面白い。ならば、二年は生かしてやる。もし無理なら殺す良いな!」




 関平は前世の鄧艾の時に屯田や運河作りをしていた。


 その上、中華の三分の二以上、地形の知識がある。


 




 こうして、関平は鄧艾流の屯田策を実行した。


 まず、民に無料で食事を与え、三交代で田畑や荒れ地を耕し、成果を挙げている者には報酬を上乗せする。


 やがて、二年後(一九一年)には、三倍どころか約六倍の約百二十万石位の農作物が収穫された。


 この画期的な治世で関平の名は中華中に広まる。

 

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