第1章 -2-
慎太郎から送られてきたURLへアクセスしてみた。
パソコンからの方が大きな画面で見れるが、立ち上げるのが面倒だったのでスマホで...。
───「reVive」
ようこそ!新時代の仮想都市へ!
この近未来の仮想都市『
「
彼らはそれぞれ自立していて、独自の判断で目的を持って生活しています。
そして日々学習し続ける彼らがこの先、どのように進化していくのか‥‥
それを見届けるのは、あなたです!!
現在、以下のサーバーが稼働中です。
・SASサーバー
・CTEサーバー
・SCBサーバー
・CSDサーバー
・AKSサーバー
・・・何の略なのか不明だが、SASサーバーを選択してみた。
それでは!歴史の見届け人として、いってらっしゃい!
画面には夜の街が表示された。
現実の時間と同期しているのだろうか?
オフィスビルが立ち並んでいた。人通りは少ない。夜だからだろうか。
画面をタップしたりスライドしたり、ピンチイン・アウトしたりと色々試しているうちに人通りの多い繁華街にやってきた。
AI制御の人たちと言っていたが、ちょっとリアルなゲームで街中を歩きまわっているNPCみたいなモノだった。
テキトーなサラリーマンをタップすると簡単なプロフィールが表示された。
追従するようなアイコンがあったのでタップして、しばらく様子を見ていた。
「彼」はバーに入っていった。店の中もリアルに再現されている。
カウンター席に座るとバーテンが近づいてきた。
彼はバーテンに向かって指を1本立てている。何か注文しているのだろう。
バーテンはグラスに氷とウイスキーぽいモノを注ぎ、彼の前に差し出した。
女の店員がナッツが盛られた皿を差し出す。
彼はナッツを頬張りながらグラスを傾け、一口グイっと‥‥
・・・何を見せられているのだろう?
追従アイコンを解除して外に出た。辺りを見渡すと色々な人が歩いている。
TVゲームのNPCは数パターンを使い回す感じだが、この世界の人たちは全員違う容姿をしている。
動き方は皆同じで若干移動速度が違うくらいだが、体格やファッション、顔や髪型、全てが違っている。
けどまぁ、AIがどうのって言ってたし、今どきのAIなら自動で何億パターンも生成できるのだろう。
夜の繁華街には夜のお店勤め風の女性もいたが、サラリーマン風の男たちが多い。
色々と凄そうではあるけれど、今世紀最大のビッグニュースとまでは思えないなぁ。。。
飽きてきた頃、慎太郎からメッセージが届いた。
『明日、宏氏と一緒にウチにcoming soon』
・・何を近日公開する気だ?
『×coming soon 〇おいでよ』
・・器用な誤爆だなぁ。
宏にも連絡して、明日は待ち合わせて一緒に慎太郎宅へ向かう事にした。
その後もreViveの世界を眺めていたが、何の刺激もない街並みが眠りを誘い、
いつの間にか寝入ってしまった...。
───翌朝。
宏と待ち合わせて、慎太郎の住むマンションへ向かう。
道中、茜との仲がどうとか、昨日の夜はどうだったとか散々追及されたが、特に何もないとしか答えようがなかった。
お前こそ麻衣とはどういう関係なのかと反撃に転じようとした頃、慎太郎宅に到着した。
慎太郎は都内のマンションに独り暮らしだ。
それなりに裕福な家庭らしく、バイトもしてないのにいつも高いもの食べて、最新のゲームを買っただのアニメのグッズを買うのに前日から並んだとかいう武勇伝を聞かされる。
「もぉー二人とも遅いよぉ。早く、こっちきて、これ見て、これ」
何を慌てているのか検討もつかない。宏は喉が渇いたから何か飲ませろと、勝手に冷蔵庫を物色している。
慎太郎の部屋には大きなタワー側のPCがあり巨大なワイドモニターが2枚並んでいる。
キーボードやマウス、大きなマウスマットは七色の光を放っていた。
モニターには、小綺麗な部屋でデスクに向かって黙々と何かを描いている女性が映っていた。
盗撮でもしているのか?と突っ込もうとしたとき、慎太郎がマウスを操作して視点を動かしていく。
女性の真上から見下ろす状態になり、そこから彼女の手元へズームしていく。
・・彼女はマンガを描いていた。アクション系だろうか。見た事のないマンガだ。
「reViveのAIDが創作しているんだよ。AIだよ?昨日からずっとウォッチしてるんだけど彼女、Fubukiさんていって、マンガ家なんだ。」
「・・はぁ」
「AIがマンガ描くくらい、今どき珍しくはないだろ?」
冷蔵庫から取り出したドリンクを勝手に飲みながら宏がもっともな事を言った。
「そうなんだけど、それはあくまでツールとして、人間がプロンプトを入れて描いてもらうって話であって・・・AID・・彼女は自分でストーリーや構成を考えて創作活動をしているんだよ。」
「・・それってー・・何が違うんだ??」
「AIならストーリーの自動生成も出来るだろうし、そういう役割を与えられたAIなんだったら、当然なんじゃないのか??」
俺も宏も、どうにもピンとこない。
「彼女が描くマンガはクオリティが高すぎるんだよ。さっき君たちが来る前、作品を1つ描き終えて、どこかに送信した後、すぐに続きを描き始めている。ちゃんとストーリーが繋がっている。これを見てよ」
そう言ってマウスを操作して、彼女の部屋の棚に並んだコミックスをクリックした。
内容が表示される。
見た事のないマンガだ。
「1巻から読んでみたけど、ちゃんとしたオリジナル作品で、しかも面白い。売れるレベル。
このクオリティで描き続けているとしたら、凄い事だよ!」
「・・・・」
確かに、AIが描いたーという作品って、それと解ってしまうものだったが、
ちょっと見た限り、素人目に見ても良く出来た作品な気がする。
普通に続きが読みたくなる。
「こっちも見てよ。」と、お気に入りリストから「ライブ会場」をクリックする。
そこでは女性アーティストが熱唱しているところだ。
聴いた事のない楽曲だったが、まさか・・・
「音楽方面はそれほど詳しくないけどさ、多分この曲もAIDのオリジナルだよ。」
宏が口をぽかんと開けたまま、楽曲に聴き入っている。
「この仮想都市には、小説家やイラストレーターも居る。ドラマや映画も配信されているから、きっと俳優やプロデューサーみたいなAIDも居るんだ。AIがどんどんエンタメを生み出している!
一方で、お店があって食品や日用品、衣服や家具なんかも売られていて、それらを生産、販売するAIDに消費するAIDも居て・・皆この仮想都市で普通に生活しているんだ。」
ようやく事の重大さが見えてきた気がした。
「クリエイターやアーティストのような生産者だけじゃなく、消費者もちゃんと生活している。仮想都市というクローズした世界で経済が回っているとか・・」
スーパーマーケットに移動すると、食材をカゴに入れる主婦っぽいAI‥AIDが居た。追従してみると、買い物を終えて家に帰り、食事の支度を始めた。流石に料理中の細かな表現までは作り込まれてはおらず、食材を台所に並べた後、料理モーション的な動きが続き、しばらくしたら野菜炒めとスープが出来上がった。
高校生くらいの息子と一緒に食事をはじめた。
俺たちも慎太郎宅に蓄えてあったカップラーメンを頂きながらAIDたちの生活っぷりに見入っていた。
食事を終えた後、色々なAIDを追従しては眺めていた。
洋服をデザインするAID、家具を作るAID、TVゲームで遊ぶAID、TVゲームを開発しているAIDまで・・
この仮想世界で産み出されたモノを、現実世界にも転用しだしたら・・・・
慎太郎が最初に言っていたように今世紀最大の事態になるかもしれない。
急速に溢れる返るエンタメコンテンツ、職を失う人たち、経済への影響・・・そんな事を気にかけていると、宏がとんでもない事をやりはじめた。
「慎太郎、ちょっとマウス、いいか?」
画面にはライブ会場が映っていた。ステージ上では数人組の女性アイドルが歌って踊っている。
カメラがぐぐっと彼女たちに寄っていく。
そしてローアングルから見上げていくと・・・・
「あーっ!ちっくしょーぅ・・暗黒補正かぁー・・」
スカートの中を覗こうとしていたらしい。
「宏氏、それは不許可ですよ。」
慎太郎は黒縁メガネの位置を整えながら得意げに言い放つ。
「お風呂場やトイレ、お着換え中なども覗けない仕様なのさ(キリッ)」
・・・既に試しるのかよ。
「ぐぬぬ・・しかしこれは、えも言えぬ背徳感というか・・それがまた心地よいというか・・ただ見てるだけなのになぁ。なんだろうこの気持ち。」
確かに、仮想都市で生活するAIDたちを(見えない部分はあるが)360度からいつまでも見続ける事が出来る。
ただそれだけなのに俺も宏も、いつの間にか「reVive」の魅力に取り込まれていた。
気が付いたらもう外は暗くなっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます