第6話 捜索任務③
「隊長!」
「この声は……亮か!」
「合流したと言う事は、多賀谷君ももこの異常性を感じ取ったと?」
「いや、俺じゃなくて凛先輩が。なのでちょっとよく分かってないです」
「知らない……? いえ、多賀谷君が知らないのも無理はないです。簡単に説明しましょう。六年前、日本最強パーティー『黒鉄の剣』がA級ダンジョンの攻略に失敗してリーダー以外全員死んだ事件を覚えていますか?」
六年前と言うと記憶が曖昧になるものだが、アレだけは覚えている。
S級冒険者5人組の最強パーティーが、格下のA級ダンジョンで敗北した衝撃的な事件は、たとえニュースを見なかったとしても伝わってきた。
「確か、半年近く攻略されてなかった攻略不能ダンジョンを黒鉄の剣が攻略することになったやつですよね? 日本のダンジョンなのになぜか海外のS級冒険者がわざわざ攻略しにきた、あの?」
「そうです。あの全滅は何故起こったと思いますか?」
「単純にA級ダンジョンが難しかった……て事ではないですよね?」
「治安維持隊やS級やA級の冒険者のみに公開されたその情報は、『エクリア暴走』」
瞬間、ダンジョンが揺れる。
「『エクリア暴走』は、何かしらの条件が達成されると発生する。その効果はダンジョンの進化、上がり幅は1〜3、今回のこれは……3だ。今ここはA級ダンジョンになった」
「敵襲だ!! 構えろ!!」
気づけば自分達の周りには、20を超えるモンスターが牙を剥いていた。
「これがA級ダンジョン……?」
「敵の集まり方、数、強さ、全てが異次元。これがA級という第一線が戦ってる現場。僕達治安維持部隊がまともに相手にできる所ではありません」
「だから……ぶっ飛べえええええええええええええええええッ!!」
その一撃に空気が爆ぜた。
餓屋の目の前だけ、モンスターは一切いなくなった。
「覚えておけ亮! アクシデントが発生した時に一番危なくて無謀で、そして手っ取り早いのはダンジョン攻略だ!! お前のそのスキルならA級でもS級でもなんでも攻略できる!!」
「でもそれじゃ隊長は……」
「隊長は強い。それにこう言う状況は得意な方です」
「っ!?」
気づけば亮は、茅松に抱えられていた。
そのまま茅末はとてつもない速度で移動を開始する。
「ちょ、え、何を!?」
「多賀谷君のステータスが今低いことはわかっています。必然的にその足で行ったら時間がかかることも」
「なるほど、でもこのままじゃモンスター来た時やばくないですか?」
「そうなってもらった方が逆に嬉しい。おや、どうやら来てくれたみたいですね」
「え?」
その言葉の通り、亮を抱えて移動する茅末の元に、前と、そして後ろから大量のモンスターが追って来ていた。
「これやばいんじゃ」
「言ったでしょう? 嬉しいと」
走り続けている為当然前からくるモンスターとの距離は縮まっていく。
後ろのモンスターも離されてたまるかとスピードを上げる。
距離は100m、
「多賀谷君、少し痛いですよ?」
「え?」
50m、30、20、10……
「[完全遮断]」
瞬間、バリアに包まれた茅末は亮を離す。
モンスターの攻撃は亮に集中する。
突然の事に対応できる訳もなく、亮はその攻撃を全て受けた。
0.8秒、その間に亮は200の攻撃を受けた。
圧倒的な威力と速度、それは亮の意識を刈り取るには十分だった。
しかしそれは叩き起こされる。
「ステータスはそのくらいで十分でしょう? 今ので私のスキルも1/10だけ分けておきました。今の多賀谷君は私より足も、ステータスも高い。」
「俺のスキル、分かって……?」
すると茅末は、ニコリと笑顔を見せた。
「行きなさい、そして勝ちなさい。[威嚇][完全遮断]」
茅末の言葉と二つのスキルは、自分が何をすべきかを理解するには十分だった。
「[逃走者]」
先程の一斉攻撃で得たスキルを駆使して、亮は突き進む。
ひたすら突き進む。
モンスターはそれについて来ようとするが追いつけない。
決して追いつけない。
200の攻撃は、[逃走者]含む全てのスキルを100%吸収し、さらには余剰分で覚醒まで果たしていた。
「着いた」
全てのモンスターを置き去りにした亮が辿り着いた場所。
その広すぎる空洞の中心には、ドアがあった。
「……行こう」
亮は、ドアを開く。
A級ソロ攻略と言う、前代未聞の異次元任務に向かい。
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