軽快な残虐さ、語彙豊かな煽り、容赦の無いザマァ。 可愛そうな皆。

生物が攻撃性をもつのは何故か?
基本的に、それは生物とはひたすらに弱く、そんな自分を守るために、で、ある。
この主人公は、異世界帰りの超越的能力を持っているため、能力的にはチート水準にある。
でも……精神が、弱い、というか、普通っ!!
精神が並みなのに、交渉や心理操作はチートレベル!
即レスバも強い!

何故彼はこれほどのチート能力を持っていながらこんなにも矮小なのかっ!?
何故これほど人をコントロールできるのに彼本人の精神性は平凡なのか……。
それは、精神性と駆け引きはまったく別のパラメーターだからである!

心理的駆け引きや、他者を追い詰めるという行為は、〝能力〟であり、〝精神性〟〝人品〟には関係がないからだ。
誰もが社会では立派な社会人の姿を演じるが、家ではだらけることもあるだろう。
演じる力は、品性や知性と直接の繋がりがない。
立派に見えてもゲスだったり、語彙がなくても心の内が豊かだったり、人は一本のものさしでは計れないのだ。
この作品はそんな当たり前の事に気付かせてくれます。

どこまでも〝弱い〟彼が社会や人間の思惑の容赦ない理不尽に晒されたとき、彼のチート能力はどのように発揮されてしまうのか。

……生きるって、戦うって悲しい事なの。
キミも弱いから、そんな酷いことしちゃうんだよね?
わかるよ。
だからごめん、今日もオレのために死んでね。

そんな悲しくも逞しい世の中に生きる人達のお話です。
彩り豊かなクソ野郎と、どうしようもない世の中の哀愁を感じる事が出来ます。
あとシンプルにザマァ系としても非常に面白いです。

腹を抱えて笑い、時折冷静になってフッと寂しい吐息を吐きたい人におすすめ。

誰だって、他人のこと、本当は大好きになりたいんだよ。
社会性動物だもの。
でもね、ごめんね、誰だって、動物だから、弱いし、ゲスいところも、結局沢山あるんだよね。
この主人公も含めて、皆ちょっぴり弱い。
でもそれが、多様な世界の姿そのものなんだと思います。

豊かな読書体験を下さった作者様に感謝します。

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