勘違いから始まる反逆王

わか

開拓

第1話 異世界への扉


 「おいおいおいおい、ここはどこだよ!?」


 周囲の光景に、つい声を上げてしまった俺。

 そして目が合う。誰と?

 耳が長くて金髪の女性や男性、頭の上に耳が生えている者が、俺の声に反応して顔を向ける。


 「あっ、すみません。な、なんでもないっす。失礼します。」


 条件反射で謝ってしまった。日本人あるあるだ。

 謝ってすぐ小屋の扉を空け、中に入る。


 (いやいやいや、どうなってのこれ?えっ、なにこれ?)


 異常事態とは、平和の日本に暮らす一般人には中々訪れない。

 だが、今、正しく起きた。


 「帰れるよ、な…?」


 小屋の中にあるもう1つの扉。

 壁に沿って打ち付けられている木製の扉。

 俺は恐る恐る、その扉を開けると、廊下に出た。


 「はぁー。間違いない。我が家だ。」


 築60年のボロ家。

 先日、引越してきた田舎で、格安で売られていた家だ。

 俺は、とある理由でこの家を購入した訳だが...


 「まじ、焦ったわ...。何あれ?いや、そんな事よりも…ここ日本だよな?」


 日本のとある田舎であることを確認するために、スマホを取りだし位置サービスのアプリを起動させる。


 「間違いない。ここは日本だ。」


 一応確認のため、家を出て、家の周りをゆっくり1周する。


 「特に、何も無い。ってか、ここ…何もなくて、人もいない山の麓だもんな。」


 (まぁ、それが決め手になって購入しただけど。)


 なんだったんだあれ?っと頭が混乱する。

 不動産会社の人と来た時は、普通の部屋だったはず。

 全くもって意味が分からん。

 部屋の扉だと思って開けたら、薄暗くてホコリが舞う地面むき出しの小屋に繋がっているなんて想像出来るかよ。


 「でもなー、また引越す手続きするの面倒なんだよな。特に住所変更するのが1番面倒くさい。はぁ、どうするかな...」


 家の中に戻り、引越し業者が運んでくれた荷物を開封し、缶コーヒーを取り出す。

 時間はたっぷりある。生きていくための金もある。


 「久しぶりの缶コーヒー、中々美味しいなー。あー、カフェインが染み渡るぅー。」


 考えることをやめ、一息つく。

 これだよ、これ。紛らわしい音や面倒な人間関係がない、平和な時間。


 「父さん、母さん...。天国でいい生活してるか?俺、これから人と関わらないで生きていくつもりだったんだけど...。人ではない者たちと関わることになりそうだよ。」


 あの光景は、見間違いではない。

 コーヒーを飲んで一息ついた事によって、だいぶ落ち着いて考えられるようになった。

 どうにでもなれ、と思っている人生だし、良い機会かもしれない。

 残っている缶コーヒーを、くいっと、飲み干し、再度例の扉の向こうへ行く決心をつける。

 いわゆる異世界に繋がっているってやつだと思うんだが...。友好的に話せる者たちだといいんだけど、果たしてどうなのか?内心ドキドキしながら異世界に繋がる扉を開け...


 「えっ?」


 「っ!」


 扉を開けて中に入ると、1人の女性がいた。突然の出来事にまたしても頭が真っ白になる。

 俺を見て、その女性は膝をつき祈るような姿になり言葉を発する。


 「救世主様。」


 「えっ?すみません、人違いです。」


 「えっ?」


 「えっ?」


 「人違いです。えーと、お邪魔しましたー。」


 「あっ、ちょっ!お待ちくださいっ!」


 気が動転して、反射的に言葉を返して帰ろうと思ったら、服を掴まれた。

 俺も困惑しているが、女性も困惑しているようで、咄嗟に掴んだ服を離さない。


 「あの、救世主様。私の、私のお話を聞いてくださいませんか?」


 救世主様?救世主?世界を救う人の事だよな?


 「うーん、俺、救世主じゃないですけど...服離してくれませか?」


 決意した目で俺を見る耳長女性。


 「話を聞いて下さるまで離しません!」


 「ええっ...。」


 何この状況は?意味分からぬ。

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