『私の彼女と女友達』 チョ・ウリ

『私の彼女と女友達』 

 チョ・ウリ  カン・バンファ 訳


 ウンジュの恋人のジョンユンには小さい頃から一緒に過ごした女友達のグループがいる。そのメンバーの一人が子供が一歳を迎えるのを祝うパーティーを開くという。大切な親友の一人としてジョンユンも招かれており、彼女も当然参加するつもりでいる。それも同性のパートナーであるウンジュと共に。

 ウンジュはかつての経験から結婚という制度に批判的で、どうしてもパーティーに参加する気にはなれない。しかし親友たちにカミングアウトして受け入れられた経験を持つジョンユンは、正式なパートナーとしてウンジュを彼女らに紹介したいようだ。そうしているうちにウンジュにとっては憂鬱なパーティー当日が近づいて──というような表題作他、女性同士の恋愛やシスターフッドと社会問題や経済格差を扱った韓国産小説。


 主人公のほとんどが女性を恋愛対象にしている同性愛者だが、当然彼女らも労働や貧困など様々な問題を抱えた社会の一員である。パワハラにあえば搾取もされ、筋の通らない慣習やシステムに怒りを覚えるし声もあげる。

 クィアな恋愛を扱った小説であると同時に、理不尽が罷り通る社会に対して意を唱える小説でもあるところが読み心地がよかった。サラ・ピンスカーの小説を読んだ時にも感じたが、「ヒロインの恋愛対象は女性である。しかしこの作品の主なテーマは彼女らの恋愛や結婚ではない」みたいな書き方をしている小説が好きなようだ。

 シスターフッドも好きなので、一介の労働者や移民など弱い立場の女性たちがパワハラなどの被害に逢っているのを見ると、怒ったり捨て置かずに行動する女性の話が多いのも嬉しかった。


 現代社会の理不尽を不理解を指摘する小説なのでSFやファンタジー的な意味で不思議なことは起きないのだけれど、再開発の予定がある地下街を舞台にした「11番出口」の読み味がマジックリアリズムっぽくて好みだった。

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