第3話 母親と魚


「タイチ。目が覚めたのね」


「う、うん」


俺は今、リビングらしき場所で座っていた。

テーブルや椅子なんて立派な物は無いので座布団的なものの上に座っている。雑魚寝ならぬ雑魚座りだ。


そして目の前にいるのは20代くらいの女性……おそらくこの人が俺の母親だと思われる。本能がそう訴えていた。一応ミスったらアレなので確信するまでは呼ばないつもりだけど。名前は前世と一緒でタイチだったみたいだ。


「よかった……急に熱を出したから心配したのよ?」


「ご、ごめん……もう大丈夫」


騙しているようでどこか居心地が悪い。向こうは本心から心配していたようだし………真実を伝えたらそっちの方がヤバそうなので耐えるのみ。


「……じゃあそろそろご飯にしましょうか」


「あ、うん、お腹空いた」


正しいムーブが分からない。タイチの記憶が無いから普段どんな話し方しているのかもわからない。どうするべきか……。


いや、別に言動とか気にしなくていいか。

普通に考えて、もし俺が変なことをしても『この子はうちの子じゃ無い、中に別な魂が入ってる』なんて気付くわけが無いよな。子供の成長だと思うでしょ普通。


万が一バレたらその時は家を出て住み込みで何処かに働きに行こう。うん、そうしよう。


「母さん、今日のご飯何?」


「今日は赤魚よ」


赤魚?赤い魚ということしかわからないな。

俺が首をかしげていると、それを見た母さんが奥に行って魚を持ってきてくれた。


「赤魚……」


「赤いから赤魚なのよ。今日はこれだけど他にも黄魚や緑魚もいるわ」


「ふーん……――え?!本当に?!」


いやいや!聞き捨てならないことを言っていた気がする。

え、なに、……黄色の……緑の…………魚?


「ええ。確か他にも青魚とか紫魚とか黒魚とかいるけど、高くて買えないわね」


「そ、そうなんだ……」


なんだそのカラフルな魚達。

泳いでたら地上から丸見えじゃんかよ。

俺でも地上からヤリなんかで捕れる気がするぞ。


……そういうことか!つまり、信号機みたいにカラフルな奴が安いのは簡単に捕れるからで、青とか黒が高いのは補色になってて捕るのが難しいからか。


ん……待てよ?でもそう考えるとカラフルな方は鳥とか人間に狙われやすいから数が減って値段が上がりそうなんだけど、そこはどうなんだ?


なるほど……きっと繁殖力がとんでもなく強いんだろう。そうに違いない。

養殖……は無理か。


めっちゃ気になるけどこれ以上カラフルな魚のこと考えても仕方ないので止めておこうか。何事にも理由は求めてはいけないよね。


「ご飯にするからタイチはナナミを呼んできてね」


「……あ、うん、わかった」


と思ったらまた此処で新情報。

ナナミって誰?俺には妹か姉がいるのか?

それに、母さんはいるけど父さんは見ないな……もしかして片親?


……ダメだ、何にも分からん。わかったのは魚がカラフルなことだけだ。


姉妹か。

正直前世の影響でいいイメージがないが……姉でも妹でもどうでもいいか。今のところ母さんがいればそれで満足だ。



――アホな女だったら俺が躾けるけどな(フラグ)





◆◆◆後書き◆◆◆


ごめんなさい、衝撃の事実は次です。


魚は関係ありません。

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