街を歩けば
「うわぁ!これ、生クリームとフルーツが入っていて、なんて美味しい食べ物なんでしょう!あっ!アデル様、このキラキラしたもの不思議です。宝石じゃないですよね?」
手にはくるくる生地が巻かれた『クレープ』という他の大陸から来たらしい食べ物を片手に持ち、子どものように喜ぶ私。
そして目の前の露店にはキラキラ光る貝殻細工が光っている。海の街で作られたことを露天商が教えてくれる。
「これはこの大陸ではないところの物だな。海の向こうにウィンディム王国という国があって、そこの国のものだな」
アデル様は買い物を楽しむ私の横に立っていて、そう話す。
なるほど、道理で見たことがなかった。遠い異国の品物なんてなんだかワクワクする。触れてみると、不思議な感じがした。
「一つ貝殻細工の物を買おうか?」
「良いんですか!?でも悪いです」
「いや、そこまで高くないし、この小さなパールのついた白蝶貝の花形のなんて似合いそうな気がする」
可愛いと私が手に取るとお店の人が似合いそうです!一点ものなんですよ!ぜひ!と勧めてくれる。
「よし。じゃあ、これをくれ」
袋に入れようとしたところをアデル様が、そのままでいいと受け取る。
「後ろを向け」
「え?」
スッとネックレスをつけてくれる。ドキドキしながら動かずに待つ。小さな花とパールが光に照らされて、雪のように光る。自分の胸元に触れてみて、私は嬉しくなる。
「うん……似合ってると思う」
アデル様がどこか満足そう。相変わらず無表情なのになぜか考えてることや感じてることが、わかってきた気がする。
「ふふふっ。ありがとうございます。大切にします。いつも身につけていたいと思います」
「ああ……うん……」
私が笑うと、紫の目が揺らぐ。……もしかして、今の笑い方も似ていたのかしら?どなたか好きな方がいるんですか?と聞きたかった……でも考えてみたら、その方と結婚できればしていたと思う。
いくら危険だといっても……こうやってお母様のように王都に住まわせても良いだろうし、孤児の私を選んで他の方に身分がバレてしまうリスクのほうが高くないかしら?もしかして……相手は人妻とか!?
異国の品を手にしてみているアデル様の端正な横顔をジッと見る。年上女性にもウケそうな気がするわ。なんだか可愛いところがあるもの。北の魔王と言われてるアデル様とは違う一面に私も心を動かされてしまったし。
アデル様に惹かれていってる自分を自覚してから、私は変だった。アデル様のことをこうやってずっと考えてるし、目で追ってしまうし……。
「何を見てるんだ?」
「え!?いえ!なんでもありませんっ!アデル様は何か欲しいものはないんですか?」
「……欲しいものか。………ない」
欲が無いのか、興味がないのか……それともそう見せようとしているのか?そう淡々と答える。私が買物しているのはどことなく楽しそうに眺めているのに……。
「そうですか……じゃあ、クレープ一口差し上げます」
「は!?食べかけの!?」
「美味しいですよ?」
私がハイッと上げると、迷った顔をしてから、パクっと一口食べた。
「あ……うん……美味しいと思う」
良かったですと笑うと、後は食えよ!となぜか目を逸らして怒ったように言うのだった。
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