アブラスギ(油杉);Keteleeria davidiana

 油杉アブラスギは中国中西部、台湾及びインドシナ半島を原産とするマツ科アブラスギ属の常緑針葉高木で、大きいものは高さ40m、直径2.5mにも達します。中国名、油杉ユサン鉄堅油杉テッケンユサン、別名、島樅シマモミ。日の当たる山地に生えます。


 樹皮は暗灰褐色で不規則に縦裂、幼枝は赤褐色で綿毛が密生します。葉は扁平へんぺい線状披針せんじょうひしん形で二縦列につき、長さ2~4㎝、幅3~4㎜あり、表面は深緑色でやや光沢があります。裏面は緑色または蒼白そうはく色で柔らかく光沢があり、先は鈍形または鋭形で多少裏面に巻き込んでます。雌雄同株。球果のマツボックリは長さ5~10㎝、径4㎝程の単一円筒形で枝先に直立します。初め淡紅色で熟すに従って、緑色、栗色と変色。種子は帯黄淡褐色でくさび形をなし長さ1.2~2.0㎝あり、長い翼があります。


 日本には大正時代の初期に渡来し、暖地の公園などに植栽されました。材は帯黄褐色でもろくて弱いが、油分に富み耐朽力が強く、建築、土木用材、器具などに利用されています。名は、材に油分が多いことによります。根の精油や種を薬用とします。種子から採れる油分は墨の原料である油煙となります。


 日本のスギのような円錐形の樹形になるのが一般的。マツの仲間ながらスギと名乗るのは材木としての流通が多いためか。樹皮は明らかにスギのそれとは異なります。


 斎藤茂吉が64歳〜65歳にかけて編んだ歌集『白き山』からの一首をご紹介します。


砂のうへに杉より落ちしくれなゐの油がありて光れるものを 斎藤茂吉

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