第41話 〜エルフ奪還作戦〜

 鈍くて重い扉が,開く音が聞こえる。

 歩くたびにガシャンガシャンと,甲冑から出る金属音が聞こえる。


 数人が訪れ,俺達が入っている牢の鍵を開け,ミーナの腕引っ張り出し,連れて行こうとする。


 「ちょっと,もうちょっと優しくしなさいよ!」

 ミーナは文句を言いながら連れて行かれた。


 連れて行かれる時,ミーナはこっちを見てウインクしていた。

 再び鍵を掛けられ,地上の扉が閉まると,真っ暗になる。


 それからどの位時間が経過したのかは,分からない。

 俺は少しウトウトしていた……


 「おい! おい! カナデ行くぞ!

 「あ,え!? クロエ?」

 「何,寝ぼけておるんじゃ。ミーナの所へ行くぞ」

 クロエの手枷はすでに外れていた。俺の手枷をクロエは,力ずくで壊した。

 牢の鉄格子に手を掛けると,クロエは鉄格子を力ずくで曲げる。


 「よし! 逃げるぞカナデ」

 「おいおいマジかよ……」


 俺とクロエは牢から抜け出す。地上へと出られる扉もクロエは蹴り飛ばしてぶっ壊す。

 派手に扉をぶっ壊した事で,完全に周りにバレた。


 「何だ!? 何だお前ら!!」

 牢へと続く扉を警備してたであろう警備兵に見つかる。


 「ピィィィィィィィィィ!!」

 笛を鳴らされた……仲間を呼ばたか,あるいは危険信号か――


 クロエは魔法を出そうとする……

 「クロエ! 殺したら駄目だ!」

 「なんじゃと!? しょうがないの」


 魔法を使うのを止めるクロエ。ステゴロでクロエは相手をする。

 警備兵の二人は剣を振りかざし,クロエに向かって振り下ろそうとする。

 

 クロエが一瞬消えたかと思ったら,相手の二人は何故か地面に倒れている。


 「まあこんなもんじゃろ!?」

 「殺して……ないよな?」

 「ちゃんと手加減しとるから,大丈夫じゃ」

 「ならいいけど……」


 俺達が居る場所に,人が続々と集まってきた。

 見覚えのある白銀の甲冑も,ちらほら見える。


 俺とクロエの目の前に何十人と集まってきた。


 「これは何とも沢山集まってきたの〜」

 「クロエやれるのか?」

 「余に任せろ。カナデは前に出るなよ?」

 「分かった」


 クロエは一人で,何十人と待ち構える敵に突撃していく。

 俺は見ている事しか出来ない。もどかしい。


 次々と倒していく。しかし,どんどん人数が増えていく。

 クロエ一人で捌ききれない敵が,俺に向かって襲ってきた。


 ヤバい――そう思った瞬間,ガキンッ! と剣と剣が交わる音がした。

 「とっとっと〜。ロイ様参上! カナデ大丈夫か?」


 突如目の前に現れたロイによって,俺は助かった。

 ロイの頭に乗ったライムが,水魔法をお見舞いし,相手が吹っ飛ぶ。

 

 「大きい音が聞こえて,急に大勢の人が同じ所へ走り出したから,何だ? と思って,付いて行ったら,カナデとクロエが暴れてるんだもんよ! オイラも一緒に戦うぜ」


 「ああ……頼むぜ!」


 いつの間にか,がきんちょのロイが頼もしく見える。

 「おらおら〜! かかってこいや!」

 しかし,足元を見ると,ロイの足はガクガクと震えていた。


 「カナデー! ミーナから魔法で合図が来たのじゃ! 合流するぞ!」

 「合流って,合図ってなんだよ」


 クロエは魔法で電撃を走らせた。一瞬にして周りに居た敵が地面に倒れる。


 「ロイもよったか! 行くぞ!」

 クロエが走りだす。俺とロイも後を追う。


 道を全て把握してるが如く,クロエは迷わず進んでいく。

 俺は付いていくのが必死で,肺が破裂するかと思うほど走る。


 クロエは立ち止まった。

 「はぁ,はぁ,はぁ,クロエ……ここ?」

 「ここじゃの。ミーナの魔力を感じるのじゃ」


 大きな庭の先にある屋敷から,途轍もない滝巻が突然と巻き起こり,屋根が吹き飛び,部屋が露出している。


 「あそこにミーナがおるようじゃな! よし行くぞ!」

 クロエが大きな門を軽々と吹き飛ばし,屋敷へと向かう。

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