第17話 〜海の街チェスター〜

 馬車で何日か移動し,やっとチェスターの街に到着した。

 海沿いの街と言ってた通り,港街で潮風吹いて磯の香りがする街だった。

 クロエとロイは馬車から身体を乗り出して街を見ている。


 ライムもバッグが出て俺の頭に乗り何かを感じているようだった。

 「それでは私の家に向かいましょう」

 チェスターの街並みを見ながらスカーレットの家に向かう。


 スカーレットの家は街の高い場所にあるようで,どんどん上へ登って行く。

 街を一望出来る高台にスカーレットの屋敷が建てられていた。


 スカーレットの父親と母親と思われる人達が出迎えてくれた。


 「おおスカーレットおかえり! どうしたんだ? 早い帰りじゃないか」

 「お父様ただいま戻りました。それが王都へ向かう道中シルバーベアーに襲われて,襲われている所をこの方々に救われたのです。王都へ向かわず戻って参りました」


 「魔物に襲われたのか!? よくぞ無事で」

 「私の娘を助けて頂いてありがとうございます」


 「いえいえ」

 「よいのじゃ」

 「貴族飯食わしてくれんのか?」


 「お父様こちらの方々の食事と部屋の用意をして頂けますか? 詳しい話しは食事の時にでも」

 「わかった。案内を頼む」


 執事と思われる人が俺達の案内をしてくれるようだった。

 屋敷に入ると,一度はどこかで見たことがなるような造りをした貴族の家だった。豪華ではあるが,下品ではない造りと装飾の屋敷だった。


 部屋に案内され,中へ入ると,多いな部屋に大きなベッドが三つあり,テーブルにソファ,化粧台まで全て整っている部屋だった。

 外に出られる場所もあり,テラスに出るとこの街を一望出来る眺めだった。


 「おいカナデこのベッド凄いのじゃ!」

 「見ろ見ろカナデ!」

 二人はベッドで飛び跳ねて遊んで喜んでいるようだった。


 しばらくすると,メンドが部屋に訪れて,お風呂の支度が出来たとの事だった。

 「風呂だと……!?」

 風呂なんてものがこの世界に存在したのか!?


 この街は水に関しても豊富な街で,風呂は屋敷の自慢だそうだ。


 「おお風呂とな! 行こうぞ」

 「すげ〜な! 風呂だってよ」


 案内されると,大きな大浴場に案内された。

 「おおおおおおおおおおおおおおお」

 正直日本人の俺にとってはテンションが上がる。


 「凄いの〜凄いの〜」

 「すげーーーー」

 二人は走り回っている。


 「こらこら! 風呂で走るな!」

 俺は身体を流して湯船に浸かる。


 「最高だぜ〜」

 「気持ちいいのじゃ」

 「これが風呂か〜」

 俺達は大きな風呂をこれでもかと堪能した。

 俺達が着ていたものはメイドが洗濯してくれるようで,それまでの間,新しい服を用意をしてくれ袖を通し,食卓へと向かう。


 するとスカーレットと父親,母親の三人が立ち上がり,深々と頭を下げた。

 「此度は娘のスカーレットを助けて頂き誠にありがとうございます。さらには騎士達に回復魔法を使ってくれたとか,重ねて感謝致します」


 「そんないいですよ! 頭を上げて下さい」

 「では食事にしましょう。心ゆくまで楽しんで下さい」


 並べられてた豪勢な食事の前で俺は我慢が出来なかった。

 隣に座った二人なんてもっとだろう。クロエは抑えきれないヨダレを垂らしている。


 食事を食べ始める。

 ライデンの料理も最高だったが,ここは港町だからか,魚料理が多い。

 新鮮な魚介類を食べるなんて久しぶりで俺は感動していた。


 「おい! ロイ! それは余の食べ物じゃ! 勝手に取るな」

 「うるへ〜。 は@&%%$#@$」


 とにかく二人はうるせー!!

 「もっと静かに食えないのか??」


 「酒もってこーい酒!!」

 「ハハハ! 豪快ですな! 話しは食事が終わってからにしましょう」

 「ありがとうございます」


 食事を終えると,スカーレットの父親が話しだした。

 「はじめまして,私はバーン・マルガレータと申します。隣に居るのが妻のカミラです」

 「カナデと言います。隣にいるのが,クロエとロイです」

 「カナデさん先程娘のスカーレットから話を聞きましたが,スカーレットの誕生会の余興を引き受けてくれたとの事なんですが……」


 「ええそうです」

 「命の恩人に大変失礼だと思いますが……」

 「なんじゃ? バーンお主,カナデを疑っているのか?」


 「疑っているとは言いませんが,本当なのか? という事です」

 「まあそれもそうじゃな! カナデ何か弾いてやるのじゃ」


 クロエがピアノを出して,俺は皆の前で一曲披露した。

 「おおこれはなんと……」

 「素晴らしかったですわね」


 「やはりカナデの音楽は素晴らしいの」

 「なるほど。スカーレットの誕生会をカナデさんにお任せていいでしょうか?」


 「任せるのじゃ!」

 ドンッって胸を叩くクロエ。なんでお前が返事するんだよ。


 「ちなみに誕生会ってのはいつやるんですか?」

 「七日後です」


 「わかりました。それまでにきちんと用意します」

 「よろしくお願いします」


 俺達は部屋へと戻る。

 「用意するって言っても,カナデが音楽をするだけじゃろ?」

 「誕生日会はきっと長いだろ? 色々と音楽を用意する必要があるし。せっかくなら派手にやりたいじゃないか!」


 「派手つったって何すんだよ」

 「まあそれが問題だが,ちょっと俺に考えがある」

 「クロエに聞きたいんだが……」


 俺は作戦を考えた。

 「カナデそれは楽しそうじゃな」

 「楽しそうだろ!?」

 「カナデ面白い事考えるな」

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