#6 守護者達の不安③ [ウィン]

 森を飛び回って2週間。

 ようやく見つけた。 


 ボクは木の枝に座り空を眺める彼女に話しかける。


『探したよ。こんなところにいたんだね』

「久しぶり。ウィンから話しかけてくるなんて珍しいわね。ついに私と契約する気になった?」


 彼女は思ってもないことをあっけらかんと言った。

 

『そっちが契約する気もない癖に良く言うよ』

「あはは。ばれた?だってウィンって弱いんだもん」


 彼女は純血のエルフ。しかも天才だ。

 精霊の声を聞くことができ、精霊を使役する者。


 ボクは彼女が苦手だった。

 しかし、今は彼女に頼るほかない。


 彼は水の精霊と癒しの精霊が守っているため、命に別状はないだろうけど苦しい生活をしているに違いない。


『今日は頼みがあってきたんだ』

「なに?」

『子供を保護してほしい。近くにある街を知ってるだろう?あそこでか弱い子供がヒューマンに殴られたんだ』

「嫌よ」


 彼女は即座に拒絶した。


「子供であろうとヒューマンごときに殴られるエルフが悪いわ。

 どうせその子ハーフとかでしょ?混血は嫌いなのよね。エルフの癖に弱いから」

『違う。ヒューマンの子だよ。ヒューマンの子供がヒューマンの大人に殴られたんだ』


「は?」


 彼女の言葉に怒気が含まれる。


「ウィン。貴方はあたしにヒューマンの餓鬼を保護しろって言ったの?論外よ。不快だわ」


 彼女は木から跳び下りる。

 そしてボクを無視し森の奥へと歩いて行く。


 ボクは追いかけて彼女を必死に説得した。


 彼との出会いから道中何があったのか。

 彼がいかにか弱くボクたちの保護が必要か。


 彼女はずっと無視し続けたけど次第に僕の話に耳を傾けてくれた。


「ウィン、分かったわ。貴方が本気でそのヒューマンの子を心配しているのがあたしにも伝わった。

 エルフは精霊の良き友人よ。貴方を信じるわ」


『うん。じゃあ!』


「だからとりあえず明日保護するかどうかを考えてあげる。今日はもう眠いから寝るね。おやすみ」


 そういって彼女は家へと帰りベッドに潜って本当に寝た。


 彼女が時間にルーズなのを忘れていた。

 これはまだまだ説得に時間がかかりそうだ。


 ボクは彼女を説得できるか不安になった。

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