第11話 勇者達


「そう言えば、カイト、リヒトの離団届けはもう出しちゃった?」


「ああっすっかり忘れていたけど、さっき出してきたぞ」


「そう出しちゃったんだ…さっき、リヒトからの引き継ぎの手引き書を見たのだけど…これ凄く大変なのよ」


「賢者のミルカが大変、そう言う位なのか?」


「そうよ…書類は簡単だし、皆でも出来るけど…量が半端じゃないのよ、凄く面倒くさいよ…なにこれ! 次の目標、目的地、予算を計上してギルドを通して都度提出しなくちゃならないのよ…こんな事していたら旅なんて出来ないわ」


「私の引き継ぎ書はこれなんだけど、聖女だからってポーションの管理から薬草の買い出し…これ全部やれって…」


「そんなに大変なのかフリージア」


「私だけ、休まないで買い物に行かないといけないわ」


「それじゃ、リダに手伝って貰えよ」


「私は、武器の手入れをしないといけないんだって…カイト用もあるから読んだ方が良いよ」


「俺も…」


嘘だろう、俺には宿の手配と料理をしろって言うのか?


不味いな、今までは気が付かなった…うん?


何故、今になって、こんな事になるんだ…引き継ぎ書は無かった筈だ。


「なんで今になってそんな事になるんだ、リヒトと別れて結構立つぞ…」


「今回の目的地までの物はリヒトが終わらせてくれていたのよ…あとこの引き継ぎ書はギルドにさっき届いたのよ」


「まぁ慣れたらどうにかなるだろう、リヒトが出来たんだ。俺達が出来ない訳ない」


「「「解ったわ」」」


この通りにやれば全部解決…そう思っていたのだが…


何だよ!この仕事の量。


こんな事をしていたら、体が休まらない。


狩りが終わって帰ってきたら、冒険者ギルドで報告。


国から予算を貰う為の各種申請。


目標の設定に…冒険に必要な各種薬品や装備の用意。


装備の手入れ。


全部丁寧に書いてあるが…これは手分けしても大変で何時までたっても慣れない。


それ以外にも生きていくのに必要な事は多い。


俺の自慢の髪も、此奴ら三人の髪も全部彼奴がカットしてくれていた。


風呂に入れない時の体を拭くハーブ水の用意。


全部彼奴1人でやっていたのか…


「カイト…逆らうようで悪いけど、この量の書類仕事を私がやっていたら、旅に支障をきたすよ…もうヘトヘト」


「そうね、聖女だから薬品に詳しいだろうって買い出しばかり…疲れるわよ」


「毎回武器の手入れは私…ハァもう嫌だよ」


「そうだな…俺だって宿屋の手配や料理はもう嫌だ…やっぱりリヒトは必要だな…直ぐにギルドを通して、リヒトに手紙を送るよ」


「そうして…この書類本当に面倒くさいの」


「狩が終わったら、すぐに宿で休みたいわ」


「魔剣や聖剣の手入れは私じゃ満足にできないからね…駄目にしちゃう前に頼むよ」


「解ったよ」


ただ手紙を書くだけで戻って来てくれる、幼馴染だからな、きっと。


この時、俺はそう思っていた。

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