【完結】後悔していると言われても・・・ねえ?今さらですよ?

kana

第1話

はあ、この学院に入学してから半年。

半年間も毎日同じ光景を見るんだもの、もう見飽きたわね。


窓から見える先にはたくさんの女の子に囲まれて楽しそうに笑っている、この国カサンドリア王国の第3王子であるドルチアーノ殿下。


彼には婚約者候補が私を含め7人いる。

今、彼に侍っているのは私を除いた5人だ。

もう1人は来年入学してくる予定だ。


予定ではドルチアーノ殿下が学院を卒業するまでに候補者の中から1人が選ばれる事になっているが、私が選ばれる事は絶対にないと言われている。


それも当然だ。

彼が私のことを嫌っている事はこの国の貴族なら誰もが知っていることだからだ。




窓越しに彼と目が合った。

また私を睨んでいる・・・

私の何が気に入らないのか、初めて会った時からこれだ。


それも今日限りね。


ふふっ『さようなら』と声には出さずに窓越しにお別れの言葉を呟いて背を向けた。


ちなみに私は初対面で挨拶して以来ドルチアーノ殿下と話した事は1度もない。


この学院に入学して半年になるし、候補にあがって10年も経ったにも係わらずだ。





ドルチアーノ殿下とは初対面の時から最悪だった。


当時7歳だった私が王宮で開かれるお茶会に両親と11歳のルイス兄様と9歳のリアム兄様と5人で参加した時だ。

初めての王宮、初めてのお茶会で緊張しながらも両親と兄達に続いて笑顔で挨拶したのだが・・・


『ふん!お前公爵令嬢のくせにデブでブスだな。嫁のもらい手もないだろうな!』


私を馬鹿にしたその言葉を言われた瞬間に両親と兄達が殺気立ったのが分かったが、私は笑顔を貼り付けて何事も無かったようにその場を後にして、兄様たちにテーブルに用意されていたお菓子を食べさせてもらった。

さすが王宮で出されるお菓子は美味だった。


もちろんそんな事で受けた屈辱を忘れることはなく、私の中でドルチアーノ殿下は敵と認定した。


(泣かす!絶対にいつかお前を泣かす!覚えていろよ!)


私を除いた家族がほくそ笑んでいたことは知らなかったが・・・




ドルチアーノ殿下の隣りで国王と王妃、第1王子と第2王子が真っ青になっていたが、そんな事は知ったことではない。


いくら顔が良くても許せないものは許せない。



そんな事があったにも関わらず1週間後には何故か私が婚約者候補にあがった・・・


この国で宰相を務めるお父様が何度断っても覆ることがなく、成立した婚約者候補だったのだ。


だがお父様は条件を出した。

私の17歳の誕生日までの10年間でドルチアーノ殿下と私が、少しでも尊重し合える関係すら結べなかった場合は婚約者候補からの辞退を認めるというものだ。



それから王子妃教育は受けたが、それは他の候補と一緒に受ける王城ではなく、私だけが我がディハルト公爵家に教師を派遣してもらい行われた。


レベルの高い学業も、礼儀作法も、マナー身に付けといて損はないと思ったし、学ぶことは苦にならなかった。


そして、学院に入学するまでドルチアーノ殿下と会うことは1度もなかった・・・


それどころか、義務で私が毎年ドルチアーノ殿下の誕生日にプレゼントを送ってもお礼の返事すらなく、私への誕生日プレゼントのお返しもなく、手紙すら貰ったことはない。





公爵令嬢として、王子の婚約者候補として培った立ち振る舞いは世間や学院では"淑女の鏡" "誰にでも優しく公平な令嬢"と言われているそうだが・・・。


だが!私だって嫌いな奴は嫌いだし、許せない奴もいる。

それがドルチアーノお前だ!


そんな私も今日で17歳だ。

この日を何度指折り数えたか・・・

朝一でお父様がいい笑顔で王宮に出勤して行った。

今頃は手続きも終わっているだろう。


婚約者候補の肩書きが無くなると思うと、開放感が半端ないわ~。


今日は我がディハルト公爵家では私の誕生日と解放記念を祝してパーティーが開かれる。

もちろん身内だけでだが・・・。


明日から残り2年半の学院生活を楽しむわ。



あばよ!

ドルチアーノ殿下!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る