06.新しいクラス

集合時間が近くなるとその場で新入生のクラス割りが貼り出され始めた。

俺は佐々木さんとの会話をいったん打ち切り、一緒に確認しに行く。


前方の生徒が捌けるのを待ちながら、遠巻きに自分の名前を探す。


「えーと……安城、安城……安城ナツメ……あった。A組だ」


「あっ……わた、私もA組です」


「おぉ良かった」


「ふひ……」


ふひ、って笑う人って実在するのか。

やっぱ佐々木さん死のオーラ纏ってて可愛いと思う。


完全に見知らぬ人しか居ないよりはずっと良い。

それに佐々木さんは人見知りをするようだが、断じて悪い子ではなさそうだし。


ちなみに偶然目についたのだが、レンはC組だった。

まぁアイツなら完全に見知らぬ人しか居なくてもどうとでもなるだろう。


「A組はこちらに集合するように。クラス割りの表と同じ順番で並んでください」


見れば、先程の男性教師が手を上げつつそう言っていた。

俺は表の一番上で、佐々木さんは真ん中の辺りだった。よって列の位置も同様だ。

佐々木さんと離れるのは少し名残惜しかったが、他の生徒達も面識のある生徒と離れ離れになったようで、列に並んだA組の面々は先程とは打って変わって静まり返っていた。


うんうん。新しい集団特有のこの気まずさ、良いよね。おっさんには沁みる。

他のクラスも少しずつ整列していき、その度に話し声が途絶えていく。


「……うわっ」


そんな折、ふと俺の後ろに並んでいた女子生徒が声を上げた。

振り返ると、彼女は何かを見ながら呆然としていた。

視線の先を見るが、特におかしなものは見当たらなかった。あるのはクラス割りを確認する生徒の人混みだけだ。


「……どうしたの?」


気になったので、思わず声をかける。

突然だったので驚いたのだろう。彼女は顔を赤らめ、視線の先を指さしつつ言った。


「あっいや……今、そこに物凄いイケメンが……」


「……あ、あぁ。なるほど。あの人?」


何も考えずに声をかけた事を後悔した。

先程までは人混みに紛れて良く見えていなかったのだが、彼女が見ていたのは、クラス表を確認するレンの姿だった。


「うん……ヤバ……めっちゃかっこいい……」


「へ……へぇ~」


彼女はレンの横顔に見惚れているらしいので、そっとしておく事にした。

下手に話題を広げて藪を突っつくのは得策ではない。


気が付けば、皆が騒めいている。レンを見ながら周りの人物と声を掛け合っているので、どうやら俺と後ろの彼女と同じようなやり取りがいくつも交わされているらしい。

どうも、アイツくらいのイケメンともなれば初対面のクラスメイトとの話題作りのきっかけになるようだ。

流石はイケメン。ち〇こもげろ。


レンはようやく自分の名前を見つけたようで、C組の集団へと近づいていった。

謎のイケメンとこれから一年間クラスメイトになる事を知ったC組の女子生徒達の間から控えめに黄色い歓声が上がる。


一瞬、レンと目が合う。

残念そうに肩をすくめてやると、レンは小さく苦笑いを浮かべながら目を逸らした。

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